阪神時代の2022年、広島戦で死球を与えた藤浪(日刊スポーツ)
阪神時代の2022年、広島戦で死球を与えた藤浪(日刊スポーツ)

「死球リスクが減る左打者を起用する」

 一方、セ・リーグ他球団の首脳陣は違った見方をする。

阪神時代に投球フォームのバランスを崩し、右打者への死球が増えた時期があった。荒れ球は打者からすると怖い。右打者は顔面付近に球が来ると、その残像が残って打撃が崩れるケースがあります。試合状況にもよりますが、死球のリスクが減る左打者を起用する可能性があると思います」

 藤浪は阪神に在籍した10年間で、与死球数で2回、暴投数で3回、リーグワーストを記録している。このため、対戦する球団が左打者をスタメンに並べたり、右打者に打順が回ってくると左打者を代打に送ったりしていた時期が実際にあった。

 当時現役でプレーしていた選手は「160キロ近い直球が頭部付近に来たら大ケガの危険性があります。藤浪が故意に投げていないことは分かっていますが、打者は投手がある程度の制球力があるという信用の下で、踏み込んで打ちにいっている。その信用が当時の藤浪に対して持てなかったので、腰が引けていた部分がありました」と明かす。

DeNAが導入した最新機器で改善するか

 ただ、DeNAも藤浪の制球難は把握している。改善できると見込んで、獲得に踏み切ったはずだ。

 IT企業のDeNAは科学的トレーニングを重視し、球団施設に最新機器を積極的に導入している。20年の春季キャンプからハイスピードカメラ「エッジャートロニック」をNPBの球団で初めて導入。1秒間に約700コマの撮影が可能な高性能カメラで、リリースの瞬間を判別できるため、変化球の習得や制球力の向上で有効活用できる。また、21年には横須賀市の球団施設・DOCKに投球動作解析機器「オプティトラック」を導入した。全身に39個のセンサーがついたタイツ型スーツを着用して、モーションキャプチャで動作を解析することで、リリースする位置などを数値化して確認することが可能になる。データを基に専門のスタッフがサポートして、投球動作の修正に取り組んでいる。

 DeNAを取材するライターは「動作解析の点で言えば、メジャーの球団に劣らない環境が整っています。藤浪がパフォーマンスを高める上でも大きな手助けになるでしょう。復活に懐疑的な見方が多いですが、かつては同学年の大谷翔平(ドジャース)と能力の高さで見劣りしなかった。投球フォームの微妙なズレを改善すれば、投球内容が劇的に改善する可能性があります」と期待を込める。

 チームは波に乗り切れない戦いが続き、85試合を終えて借金3。リーグ3位だが、首位・阪神に9.5ゲームの大差をつけられ、逆転優勝に向けて苦境を迎えている。藤浪は救世主になれるだろうか。

(ライター・今川秀悟)

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