試合は1対1の引き分けに終わり、MVPの人選も難航したが、3回から登板し、3イニングを2安打3奪三振無失点に抑えた澤村拓一(巨人)が選ばれた。

 ところが、直後、地元・日本ハムファンと思われるから観衆から「エーッ!」というどよめきが起きる。さらにインタビューを受ける澤村に、ブーイングが浴びせられ、全セの原辰徳監督(巨人)も思わず苦笑い。澤村も「貰っていいのかなと。北海道の人にしたら、(前日本ハムの)糸井(嘉男)さん(当時オリックス。1回に先制タイムリー)が貰ったほうが良かったと思いますが……」と遠慮がちなコメントだった。

 なぜブーイングが起きたのか? 実は、澤村は前年、日本ハムとの日本シリーズ第2戦で初回に陽岱綱と中田翔に死球を与えており、この一件を不快に思っていた一部の日本ハムファンが、素直に祝福する気になれなかったようだ。

 ネット上でも「お祭りなんだからどのチームの誰が活躍しても笑って応援しなきゃね。プロ野球ファンならば」「澤村がじゃなくてセの選手が獲ったのが気に食わなかったんだろ。だれか一人がやり始めたから自分もって感じでやったんだろうね」などの声が上がり、試合終了後も熱い議論が交わされていた。

(文:久保田龍雄)

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