“ミスタープロ野球”長嶋茂雄氏(写真提供・日刊スポーツ)
“ミスタープロ野球”長嶋茂雄氏(写真提供・日刊スポーツ)
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 今月23、24日の2日間、「マイナビオールスターゲーム2025」が京セラドームと横浜スタジアムで開催される。各チームのスター選手が一堂に会する夢の球宴とあって、ファンのボルテージもいやがうえにも高まるが、その一方で、過去のオールスターでは、時ならぬブーイングが起きたシーンもあった。

【写真】江夏豊のボールを空振り、勢い余ってヘルメットを飛ばす長嶋茂雄さん

 6月に他界した“ミスタープロ野球”長嶋茂雄氏は、現役時代に通算16回オールスターに出場し、打率.313、7本塁打、21打点と“オールスター男”にふさわしい成績を残している。

 だが、1972年は夏バテからか調子を崩し、7月22日の第1戦(東京球場)では、全セの4番で出場したにもかかわらず、1回無死満塁の先制機に遊ゴロ併殺打、2打席目も二ゴロと絶不調。とうとう4回の守りから交代してベンチに引っ込んでしまった。

 収まらないのが、スタンドの2万6604人のファン。「長嶋はどうした。(入場料の)2500円は高いぞ」と騒ぎ出した。

 すると、長嶋は、5回に全セの攻撃が始まると、「コーチが足りないので、長老(36歳)の君がやってくれ」という全セ・川上哲治監督(巨人)の指示で、一塁コーチャーズボックスに姿を現した。ファンが喜んだのは言うまでもない。

 直後、田淵幸一(阪神)が左翼席にライナーで運ぶ豪快な一発を放ち、2点差に追い上げると、長嶋も一塁ベース横で田淵と祝福の握手。7回に大矢明彦(ヤクルト)が右翼線を破ると、大声で「回れ、回れ」と右手をグルグル回すなど、“オーバーアクション会・会長”ならではのパフォーマンスで、スタンドを盛り上げた。

 翌23日の第2戦でも、長嶋は2打席凡退後に交代すると、今度は三塁コーチャーズボックスに立ったが、選手としての長嶋を見たかったファンはやや鼻白んだのか、前日に比べて拍手はまばらだった。

 だが、同25日の第3戦はフル出場し、6回に7打席目で初安打を記録。「ほっとしましたね」の言葉にも実感がこもっていた。

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