
毎月の住宅ローンは、独身時代の2人の家賃の合計とさほど変わらない。そろって正社員だから、会社の産休・育休といった福利厚生を夫婦ともに問題なく取得でき、その恩恵を受けることができるのも結婚のメリットだという。
2人そろって生活を運営していくという意識がより高まれば、結婚する人は増えるのだろうか。山田教授は、その前に必要なことがあるとして、こう指摘する。
「格差が縮まれば結婚が増え、格差が開けば結婚は減ります。正規雇用が増えるか、非正規雇用でも十分な収入が得られたら、『結婚しても大丈夫』と思える人が増えるはずです」
阿佐ヶ谷姉妹みたいに
実際、内閣府の調査(21年)によると、既婚の20代男性の正社員率は79.8%だが、独身の20代男性では46%にとどまる。つまり、安定した雇用の人ほど結婚しているのだ。
さらに、昨年の春闘の賃上げ率はバブル期並みを記録し、今年も高い水準だ。初任給を引き上げる企業も相次ぎ、サイバーエージェントでは42万円、その他の企業でも30万~40万円台が相次ぐ。
「初任給の高い一部の若者に目が移り、年収の低い人は、ますます結婚しにくくなっています。ごくわずかな高収入層が生まれる裏で、多くの企業や地方には恩恵が及ばず、若者の間で格差が広がっています」(山田教授)
その結果が、冒頭の女性のような「普通の人がいない」という嘆きにつながっているのだろう。
山田教授が最近、学生にアンケートを取ったところ、こんな回答があったという。
「阿佐ヶ谷姉妹みたいになりたい」
アパートの隣部屋で暮らし、たまに一緒に食事をしたり、泊まったり。
「結婚しなくても、子どもを産まなくても、中高年になっても、1人でも孤立しないようなモデルが求められています」(山田教授)
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2025年7月21日号より抜粋
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