
「結婚したいのに自分と同じ500万円くらいの年収の人を探すことに苦戦する。」ある婚活女性はそう嘆く。共働きでも子育てをするのに厳しい経済状況になるくらいなら、結婚しない方がいいという価値観が増えているようだ。AERA 2025年7月21日号より。
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理想と現実のギャップがあって、結婚を諦める人がいる影響か、恋人保有率も減少しているという。
長年、家族のあり方を研究してきた中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)は、
「『恋愛は無駄』という価値観が広がっています。結婚、子育てで苦労するなら、独身の方がいいと思うのです。では、若者はその代わりに、何にエネルギーを投じているのか。“推し”に時間とお金を使いたい人も増えています」
そのひとり、都内で暮らす30代の医療職の女性は3年前、結婚を考えていた彼と別れた。理由は「推し活」だ。
ある日、彼が東京から地元に戻って、家業を継ぐと言い出した。
「いつ地元に来る?」と聞かれたが、東京を離れたら“推し”の舞台を見る日々の楽しみが奪われてしまう。
リスクある結婚よりも
女性の周りに、推し活をしながら結婚している人は多い。でも結婚したら、自由な時間もお金も減ってしまうだろうし、家事育児にも追われてしまう。ましてや見ず知らずの土地での生活だ。
「私は地方に行くのは無理って言ったよね? リスクを負ってまで結婚できない」と女性は別れを告げたという。
結婚はリスク。そんな価値観が広がる時代だが、結婚した方が“得”だと考える人もいる。
愛知県のIT企業に勤める女性(33)は、事務職だった独身時代は年収240万円。同じ企業でエンジニアとして働く夫(35)は年収420万円。自分も夫も低収入で、不安はあったが5年前に結婚に踏み切った。
「一緒に暮らした方が光熱費も家賃も浮く」と判断したからだ。結婚前は、それぞれワンルームマンションに住んでいたが、今はなんとマイホームを購入。広々とした間取りで、ベッドルーム、リモートワークルームまであるという。トイレは温水洗浄便座で便座も温かくなった。