
厚生労働省の調査によると、日本の婚姻率は半世紀前と比べると半分以下に減っている。結婚したい人は多数派で、マッチングアプリの普及などで出会いの数は増えているものの、結婚へのハードルとなる現実的な問題が。AERA 2025年7月21日号より。
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「これを見てください」
大阪府内で金融機関に勤める女性(33)が、スマホ画面を見せてくれた。映し出されていたのはマッチングアプリの男性のプロフィル写真。社員証のような証明写真、自撮りで無表情な写真、背景に酒瓶がやたら写る写真……。
「この写真を選んじゃうのは、どうかと思う。でも、本当はいい人かもしれないじゃないですか」
女性は自分自身に言い聞かせるように言って、週末には実際に会ってみるのだという。だが、写真通りで冴えない印象だったり、見た目は問題なくても精神的に子どもっぽかったり、家事分担する気がなかったりして、落胆する。
「会える人の数は増えたけど、選ぶのに疲れたのが本音。『普通の人』って、いないんですね」
女性が結婚相手に求めているのは、イケメンでも高年収でもない。プライドを持って仕事をしている人で、「吉野家の牛丼をテイクアウトしても『もったいない、牛皿にすればいいのに』と文句を言わない柔軟さがある人」だと理想的という。そして続けた。
「年収は自分と同じ500万円くらいあればいいんです」
国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(2021年)によると、25~34歳の未婚の男性の年収のピークは300万円台。だが、同じ25~34歳の結婚している男性の年収のピークも400万円台にとどまっている。つまり、冒頭の女性がいう「年収500万円」は、もはや「普通の人」ではないのが現状だ。