
ハマ:僕も全然見られなかったけど、急に平気になるんですよ。あとね、根本的な話なんですけど、我々くらいまでキャリアを重ねてくると、褒めてくれる人がいなくなるでしょ? 愛犬とかって「いい子だね、すごいね」ってめっちゃ褒められるじゃん? ああいう感じでもっと褒めてほしいですよね、日常的に。
百田:ははは!
ハマ:ないものねだりだけど、2時間半のセットリストで何千人、何万人の前で歌ったり演奏したりすることが、いかに普通じゃないかをわかってほしい。でも実際は「はい、お疲れしたー」とか言われるだけ。たまには褒めてもらわないと、おかしくなっちゃうよねぇ。特に日本人は「自分なんてまだまだ」みたいに卑下しがちなところがある。もちろん上には上がいるし、そう思うから伸びるんだけど、「すごく良かったよ」の一言で救われることもあるから。
百田:今のお話を聞いて、確かに「良いわけがない」って思ってる自分もいるなぁと思いました。歌うことに苦手意識を持ったまま来ちゃってるので、それが抜けないし、今も自分の根底にあるんだなって。
ハマ:ももクロのみなさんはもっともっと褒められなきゃダメですよ。でも、人が褒めてくれないんだったら自分で褒めるしかない。僕なんてライブ中にベース弾きながら結構しゃべってますからね。
百田:どんなことを?
ハマ:自分の演奏に「今の良かったね!」とか(笑)。たぶん最前列のお客さんには聞こえてるんじゃないかな。
百田:面白いです。でも私は、上手くできないからこそ続けられている感じも自分の中にあって。自分の思い描いているものに対して、一生到達しないんじゃないかって……。
ハマ:わかりますよ。
百田:本当ですか? ハマさんはできないことなさそうです……!
ハマ:いや、そんなことはない。人の演奏を聴いて「すごいな」とか「悔しいな」って思うし、人と比べるものでもないよな、と思ったりもしますよ。
百田:音楽の世界で活躍されている方のお話を聞くと、「気づいたら弾けてた」とか「もともと歌が上手かった」とか、才能としか言いようのないものをお持ちの方ばかりなんです。でも、私はそんな経験を一度もしたことがない。だから、この世界にいるけど、すごく遠い世界だなっていつも思っていて。いろんな人の話を聞けば聞くほど、私はなんでこの世界にいるんだろう?って不思議になるんです。
ハマ:わかったようなことは言えないけど、いわゆる天才と呼ばれているような人も、それはそれで死ぬほどしんどいと思うんです。彼らには彼らの座標があって、たぶん自分自身に一つも満足していないし。
百田:そうかもしれませんね。
ハマ:百田さんは歌に対して苦手意識があるけど、それってある種、百田さんの中に理想とするビジョンがあるからこそなんですよ。そして、自分がまだそこに至っていないと自覚している時点で、めちゃくちゃ向いているんだと思います。
(構成/編集部・藤井直樹)
※AERA 2025年7月21日号
※この対談の続きは7月22日発売の「AERA 7月28日増大号」に掲載します。
こちらの記事もおすすめ 百田夏菜子が聞く、ハマ・オカモトがベースを始めた理由 ビートルズを弾いて「モノクロだったものに色が付いた」