
「死んだと思ってたよ」
その後の調査によると、どうも出火箇所は俺の部屋だった可能性が高いらしく、警察から疑われました。引きこもりの俺が自分で火をつけたんじゃないかということです。
こっちは命からがら逃げ出したのにそんなことを疑われても、とガクッとしました。しかし結果的には、どうもコンセント付近が激しく燃えていて、ここが出火の原因ということに落ち着いたようです。
その事実を聞いたとき、俺が火をつけたわけではないけれど、喪失感でいっぱいになりました。
病院に搬送されてから、何人かの友達から電話がかかってきました。聞くことはみんな同じです。
「火事は大丈夫だったか? 生きてるの? みんな、お前のこと死んだと思ってたよ。生きててよかったよ」
モノレール沿いに建つ家だったから、燃えている様子を見た人も多かったようです。家は燃えているし、病院に搬送されたことは翌日の新聞に書かれているし、もう俺は死んだようだという噂が広がったようです。
当時はSNSもないから、それはしょうがないことです。
実は生きていたということがわかって、彼らはものすごく喜んでくれました。
俺も自分を心配してくれる友人がいたことが嬉しくて、ありがとうな、と心から言いました。そいつらとは今でも付き合いが続いています。
(リュウジ・著『孤独の台所』から一部を抜粋)

孤独の台所