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文科省が公表した最新の調査結果(2023年度)によると、不登校の小中学生の数は34万人を突破した。10年前と比べると、小学生は5倍、中学生は2.2倍だ。不登校児が増え続ける一方、学び方も支援の選択肢も多様化している。AERA 2025年3月3日号より。
【写真】授業時間の削減、独自カリキュラムの教育を実施する今春開校予定の「学びの多様化学校」
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不登校支援については国が進める制度もある。05年度から始まった「学びの多様化学校」だ。不登校児童生徒を対象とする特例校のことで、授業時間の削減などができ、独自カリキュラムの教育を実施することもできる。全国の設置状況は公立21校、私立14校の計35校。この中には小中学校だけでなく高校も入っている。
神奈川県鎌倉市では今春、「学びの多様化学校」として新たに中学校を開校予定だ。同市の23年度不登校児童生徒数は小学生161人(2.14%)、中学生221人(6.48%)で、ほぼ全国平均と変わらない状況だ。これまでも教室に入りづらい子のために校内にフリースペースを設置したり、外部のフリースクールに通う子の保護者に対して月額1万円を上限とする利用料補助制度をつくったりするなど支援を続けてきた。第3の矢として放つのがこの学びの多様化学校だ。
市内にある通常の中学と比べて授業時間数を25%削減、授業時間を減らしたことで登校時間を1時間後ろにずらすことができた。市内全域からの登校を視野に入れ「遠くからの生徒も通えるように配慮したかった」と担当者は語る。同校の設置にあたってはイエナプランなど各地のオルタナティブスクールも参考にした。全校生徒を10人程度の縦割りのグループに分け、ホームルームや学活などを行う予定だ。国語、数学、英語の3教科は生徒自身で学習計画を立て、ICT機器を活用しながら学習を進めていく。また、音楽、美術、技術・家庭の3教科は本人が自分の興味関心に合わせて教科を選択、学びをデザインしていくという。定員は各学年10人の30人程度。教員やスクールカウンセラーなど約10人が子どもたちの学校生活を支える。
昨年行われた説明会には定員をはるかに超える95人の児童生徒が参加し、最終的に申し込みまで進んだのは33人。鎌倉市教育委員会多様な学びの場づくり担当課長の坂本卓さんはこう話す。
「転入学の申し込みまでに在籍校や教育委員会との面談、学校体験などを行いました。対話と体験を重ねる中で自身の将来と真剣に向き合い、この学校を選ぶ場合も、選ばない場合も、納得感を持って進路決定することができたのではないかと思います」
(フリーランス記者・宮本さおり)
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※AERA 2025年3月3日号より抜粋
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