ふらっと入った伊勢丹で、気がつけば両手に紙袋を抱えている。高価な洋服も「一生着るとしたら一日数百円だ」と日割り計算し、なかば強引に自分を納得させて買ってしまう。それなのに、家に帰れば出番を待つ服たちがクローゼットにいっぱい。
「わたしのおめかしとは失敗の連続である」。そんな著者が「おめかし」について朝日新聞紙上で6年間連載したエッセイ約70話が収録されている。「おしゃれ」と違って「おめかし」には他人の評価が必要ない。自分がいいと思うものを全力で肯定する。ゆえに失敗もたくさんする。しかし、それを打ち消すくらい最高の気分にもさせてくれる。だから「おめかし」はやめられない。
 さまざまな失敗談にくすっとさせられながら、いつの間にか「おめかしの引力」に引き寄せられる。

週刊朝日 2016年6月17日号