神田愛花さん(写真は本人提供)

――連日、さまざまな番組で活躍されているのに、今でもそう感じていらっしゃるのは意外です。

 自分の中でちゃんとやれていると思えるのは、コメンテーターのお仕事です。前もって扱うニュースが決まっているので、下調べをして、自分の意見を固めておく。本番では、司会の方が順番に出演者を指して、話を振ってくださるので、予定外のことはほぼ起きません。

 でもバラエティー番組では事前に準備をしたところで、当日誰が何を言うのか、私の発言がどう受け止められるのかはまったくわかりません。しかも、NHK時代は自分の個性を認識してアウトプットする教育なんて受けていないので、私自身がどんな人間なのか、何を言えばいいのかもよくわからなくて……。

 正直、人と比べてしんどくなってしまった時期もありました。仕事がまだ少なかったころ、たくさんテレビに出ていらっしゃるフリーアナウンサーを見ると、「なんで私には出番がないの?」という怒りが湧いて、自分自身が支配されてしまったこともあります。

ようやく気づいた、自分の役割

――苦しい時期をどう乗り越えたのですか?

 怒りの気持ちを分析してみたら、あざとさを上手に表現できたり、女性芸人さんと渡りあえたりするほかのアナウンサーへの嫉妬によるものでした。それで、自分が番組に出たとき、その方たちのしゃべり方やキャラクターをまねしてみたんですけど、全然うまくいかない。ようやく自分の力不足に気づくわけです。

 彼女たちのような能力のない自分は何ができるんだろうと考えました。すると、その場で起きたことを真剣に受け止めて口にしたときに、たまにみなさんに笑ってもらえることに思い至ったんですね。

 収録後、「よかったよ」って言ってくださるプロデューサーさんに、何がよかったのかと聞くと、「神田さんがそれをわかってないのがいい」って誰も論理的に説明してくださらない。マネージャーでさえ「そのままでいいんです」って。ということは、自分の役割は思ったことを素直に言葉にすることなんだ、それをやり続けるしか生き残る術はないんだと思いました。

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