クリスマスや年末年始に向けて、楽しむ機会が増えるスパークリングワイン。
グラスにキラキラと輝く無数の泡は、パーティーやお祝いの席を華やかに盛り上げてくれます。
なかでも、ひときわ繊細な泡が立ちのぼるシャンパンは、多くの「泡好き」を魅了してやまない特別な存在です。
ご存知の通り、シャンパンはフランスが世界に誇る高品質なスパークリングワイン。
その起源はフランスと思いきや、ちょっと意外な国にあったのです。
まず「シャンパン」とは?
シャンパンには厳格な規定があり、フランス・シャンパーニュ地方以外で産したスパークリングワイン(発泡性ワイン)をシャンパンと呼ぶことは、フランスの法令(AOC/原産地呼称統制)で禁止されています。
さらに、「決められた品種のブドウを使う」「ボトルの中で再発酵させる」「封栓後15ヵ月以上熟成させる」など、さまざまな製法基準をクリアしたものだけが、シャンパンと名乗ることができるのです。
シャンパンとほぼ同様の製法で生産されるスパークリングワインに、スペインの「カヴァ」、イタリアの「スプマンテ」、ドイツの「ゼクト」などがありますが、シャンパンはその規定基準の厳しさにおいて突出しています。
だからこそ、高い品質とともにプレミアムなブランド価値が保たれ(しかも高価!)、世界中の王室やセレブたちからも愛され続けているのです。
海を渡ってイギリスで誕生したシャンパン
シャンパンの元となるワインの歴史は古く、中世からヨーロッパ各地でワイン造りが行われていたといいます。
フランス北部のシャンパーニュ地方でも、16~17世紀頃から一般的な赤ワインが生産されていました。しかし、冬の寒さが大変厳しいため、春になるまでワインの発酵が十分に進まず、発酵が完了しない状態(半発酵)でワインを樽に詰めて出荷していました。
同じヨーロッパでも、ブドウ栽培が難しい気候のイギリスではワインが生産できず、海峡を隔てた隣国のフランスからワインを輸入していました。
シャンパーニュ地方からも多くの樽詰めワインがイギリスに送られましたが、それを現地でボトルに詰めたところ、春の訪れとともに驚くことが起こりました。春の暖かさで半発酵のワインがボトル内で二次発酵し、発泡性のワイン・シャンパンになったのです。
時は17世紀、イギリスで起こったこの偶然の出来事が、シャンパンの起源といわれています。
盲目の修道士 ドン・ペリニヨンの偉大なる功績
ちょうどその頃、シャンパーニュ地方のオーヴィレール修道院で、ブドウの栽培やワイン造りに携わっていた修道士 ドン・ペリニヨン。彼こそがシャンパンの製造法を確立した人物といわれ、その名を冠したシャンパンは、いまや誰もが知る最高級の銘柄となりました。
イギリスで発泡性ワインが誕生したように、シャンパーニュ地方でも春になると、二次発酵で発泡性のワインが自然に醸されていました。
それをボトルに封じ込めて安定生産するために、ドン・ペリニヨンは発泡の圧力に耐えるガラス瓶の製造法を考案。密閉度を高める丈夫なコルク栓を使用し、ヒモでしばって固定する方法を考案したのも彼だといわれています。
また、ドン・ペリニヨンは盲目だったため、飛びぬけて味覚や嗅覚が鋭かったといいます。その優れた資質と探究心により、異なる品種や収穫年のブドウを組み合わせた「キュヴェ(ブレンド)」の製法を確立。これにより、シャンパンの品質を安定させるとともに、より洗練された芳香をもつ泡の世界を創り上げました。
現代においても、キュヴェはシャンパンの最も重要な基本要素とされ、各メゾンのブレンド法やレシピは門外不出の企業秘密となっています。
イギリスで偶然にも誕生し、盲目のフランス人修道士によって命を吹き込まれた魅惑のスパークリングワイン。
そんなシャンパンの歴史に思いを馳せながら、繊細な泡が立ちのぼるグラスを片手に、大切な人と特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。