<ライブレポート>【LFJ2024】日本初演作品も、鳥をテーマにした北欧音楽を堪能する演奏会

 フランス・ナント発のクラシック音楽祭【ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024】。中日となる5月4日には、“鳥”をテーマに北欧の作曲家によって作られた3作品が、角田鋼亮(指揮)、横浜シンフォニエッタ、そしてヴァレンティーヌ・ミショー(ソプラノ・サクソフォーン)によって披露された。

 今年2月、【ラ・フォル・ジュルネ】アーティスティック・ディレクター、ルネ・マルタンにインタビューをした際、“Billboard JAPAN読者へおすすめする公演”のひとつとして挙げられたのが、ヴァレンティーヌ・ミショーが出演する、この【鳥!鳥!北欧の鳥!】だった。驚くべき実力を兼ね備えた若手サクソフォン奏者の演奏を聴くため、多くの聴衆が東京国際フォーラムホールCに集まった。

 鳥は太古の昔から自然界で音楽を奏でていた音楽家の“オリジン”ともいえる存在である。多くの音楽家たちが鳥からインスピレーションを受け、楽器で鳴き声を模倣したり、イメージを音楽にしたりしていた。北欧の作曲家たちも同様に鳥に魅せられ、多様な音楽を創り上げてきた。

 1曲目はシベリウスによって作曲された「トゥオネラの白鳥」。黄泉の国トゥオネラに流れる川を泳ぐ白鳥をイメージした作品だ。冒頭、弦楽器による繊細な和音の上をコール・アングレとチェロの旋律が交互に絡みつくように奏でられる。終始ゆったりと繊細な音楽をなめらかに舞うように指揮をする角田とそれに呼応するオーケストラが印象的であった。2曲目のラウタヴァーラ「カントゥス・アルクティクス(北極圏の歌)」は、冒頭のフルートの連符から調性を感じさせず浮遊感のある音楽。実際に録音された鳥の声も流れ、オーケストラと鳥の声が美しく混じり合う様子に不思議な感覚に陥る。なかなか実演の機会がない作品に、多くの観客が息を呑むように鑑賞していた。

 そして最終曲が、ソプラノ・サクソフォーン奏者ヴァレンティーヌ・ミショーがソリストとして登場した「ピーコック・テールズ(孔雀物語)——ソプラノ・サクソフォーンとオーケストラによるミレニアム版」だ。もともとクラリネット協奏曲として書かれたこの作品を、ミショー自ら作曲家にオファーし、ソプラノ・サクソフォーン版が誕生。暗転した舞台からサックスの音が聞こえてくる。次第に舞台は青白く光り、青いドレスに身を包み、座りながら演奏するミショーの姿が露わになる。ミショーは途中羽飾りのついたマスクを着け、楽器を置いて孔雀のようにゆっくり歩いたり、羽を広げるようにドレスの裾をあげたりして舞う。演奏も鳥の声のようにフォールしたり、うなるような音を出したりする。まさに、彼女が孔雀そのものなのだ。技巧的なパッセージもどこか余裕があり、夢中になって聴き入る。最後はミショーが息をフッと吹きかけ、舞台が暗転し曲が終わる。演奏、舞、演出。どれをとっても驚きのプロダクションに会場は拍手喝采だった。

 鳥をイメージした音楽、鳴き声を聴く音楽、そして、鳥そのものになりきる音楽。同一テーマでもこんなにも多彩な表現があることを知る。そして、終演後舞台に置かれたサクソフォーンを取りに戻ってきたミショーを見ると、帰る足を止め多くの観客が温かい拍手を彼女に送る。多くの人にとってヴァレンティーヌ・ミショーという音楽家に舌を巻き、今後の活躍に思いを馳せる演奏会となった。

Text by 山下実紗 Photo by Taichi Nishimaki

◎公演情報
【ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024 ORIGINES(オリジン)——すべてはここからはじまった】
2024年5月3日(金・祝)、4日(土・祝)、5日(日・祝)
丸の内エリア(東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷)
全90公演