「楽しかったです。毎日だれかと話をするなんて初めての経験でしたから」
しかし、ほどなくして「埋もれてしまう」という焦燥感にさいなまれるようになる。会話を続けるには、強力な武器や珍しい衣装を獲得して話題を提供しなくてはならない。そのためには課金をし、ガチャと呼ばれるくじを引く必要がある。
お金さえかければ、すぐに反応が返ってきた。「全部そろえたんだ!」「すごいね」「いくら使ったの?」。
抵抗感があった「リボ払い」だが…
パート勤務で、毎月の給料は約10万円。実家住まいだったとはいえ、自由になるお金は多くなかった。最初はクレジットカードのショッピング枠を使って10万円を工面した。限度額を超えると、今度はキャッシングに手を出した。返済が滞りそうになると、スマホの単発バイトで日銭を稼いだ。初めて返済をリボ払いにしたときには強い抵抗感があったが、それもすぐにマヒしたという。
それからは寝食を忘れてゲームに没頭。左手にスマホを握ってプレイし、右手でパソコンを操作しながら掲示板に書き込んだ。1日に30万円をつぎ込んだこともあった。複数のプレイヤーが一緒に戦う協力プレイでは、強力な装備を持つ人が仲間に誘われることが多い。また、ネット上では借金も“武勇伝”として受け止められたという。
ユウイチさんは「『一緒に敵を倒そう』『熱心に課金してくれるユーザーのおかげで配信が続く』と言われ、頼りにされている、期待されていると感じました」と振り返る。
しかし、終わりはあっけなかった。ゲームは開始から4年後の2019年に配信が終了。理由は「課金による収益を伸ばすことができなかったため」だった。
「ゲームが終わると、掲示板からも人がいなくなりました。残ったのは借金と、これからどうすんのという焦りだけでした」
先にも書いた通り、ユウイチさんの子ども時代はいじめられた記憶しかない。