<ライブレポート>Vaundy、大きな熱狂を生み出した【Vaundy one man live ARENA tour “replica ZERO”】ファイナル公演
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 Vaundyが、2024年1月21日に東京・国立代々木競技場第一体育館にてアリーナツアー【Vaundy one man live ARENA tour “replica ZERO”】のファイナル公演を開催した。

 今回のツアーは昨年11月にリリースされた2ndアルバム『replica』を引っさげて行われたもの。そこでVaundyが見せたのは、骨太な演奏と歌の力で大観衆を魅了する、ミュージシャンとしての破格のポテンシャルだった。昨今、大きな会場のライブでは様々なアーティストが映像を用いた演出を当たり前に用いているが、Vaundyのステージセットにビジョンはなし。そのかわりに壮麗なライティングの演出が強く印象に残った。何より、不敵な存在感を見せるVaundyのカリスマ性と、楽曲そのものの持つパワーが大きな熱狂を生み出していた。

 開演時刻を少しまわると、「ZERO」のイントロが鳴り響きステージ下からVaundyがせり上がって登場。「よう! 元気か!」と声をかける。そのまま花道をゆったり歩み広い会場を見回しながら歌う。ヘヴィなギターサウンドに乗せ、スポットライトの光を浴びて歌う姿にはロックスターの風格がある。そのまま高らかなシャウトを放った「裸の勇者」、メインステージに戻りバンドメンバーと向き合って歌った「美電球」と、序盤はエネルギッシュなロックチューンを披露して会場の熱量を上げていく。

 オーディエンスの歓声と手拍子が巻き起こった「恋風邪にのせて」、赤一色のライティングがドラマティックな空間を作り上げた「カーニバル」に続けては、「踊っちゃいなよ!」と告げて「踊り子」へ。シンプルな演奏と歌で広いアリーナを掌握する。セットリストは2枚組アルバム『replica』のDisc1、Disc2に収録された楽曲を交互に披露していくような構成だ。

 「それじゃあ踊れてないぜ、踊ってみせろもう一回!」と客を煽ったVaundyは、ミラーボールがキラキラと光る中、軽やかにステップを踏んで「常熱」を歌う。椅子に座って優しい歌声を響かせた「宮」、バンドのグルーヴィーな演奏と歌の絡みが心地よい「そんなbitterな話」、揺れる光を背後に歌った「黒子」、花道を歩きながら巧みなラップを聴かせた「NEO JAPAN」と、中盤はミドルテンポのメロウな曲やダークな曲を続け、オーディエンスを自分の世界に惹き込んでいくようなステージを展開する。

 「なんだなんだ、この曲知らなかったか。ごめんな、じゃあ知ってる曲やるよ」と、続けて披露したのはこの日のセットリストの中では唯一『replica』収録曲ではない「不可幸力」。曲を歌い終えて歓声が巻き起こっていた客席が、続くバラード「呼吸のように」の歌い出しでピタッと静まり、一気にピンと張り詰めた空気になったのも印象的だった。静かに、しかし力強く歌い上げたこの曲のパフォーマンスはこの日のライブでもクライマックスの瞬間の一つになっていた。

 「どうもこんばんは、Vaundyです」と歌い終えて挨拶したVaundyは、「意外と見えてるよ。いい建築ってことですね」と会場を見回す。「明日は休みにするぜ」と笑顔を見せ「それくらい本気でやろうぜ、今日は!」と叫んで「Tokimeki」を披露。後半はカラフルでポップな曲を連発する展開だ。オーディエンスの手拍子が鳴り響いた「花占い」では、眩しいライトに照らされ大きく両手を広げて歌う。「今夜もキメてやるぜ!」と披露した「トドメの一撃 feat. Cory Wong」では、キラキラと紙吹雪が舞う。大きな多幸感に包まれる。

 そして終盤はひたすらアグレッシヴな曲を連発しテンションを上げていく構成だ。「ぶっ飛ぶ準備はできてるかい? 気付いたら終わっちまうぜ、行くぞ!」と叫んで披露した「Chainsaw Blood」ではところどころでVaundyがマイクを客席に向けシンガロングが巻き起こる。飛び交うレーザーの光が興奮をさらに呼び覚ます。切れ味鋭いフレーズをバンドメンバーが迫真の演奏で響かせる「逆光 -replica-」を雄々しい叫びと共に歌い終えると、Vaundyは息を切らしながら「さすがに疲れたぜ」と語る。「全部出しきってもらわないと困るんだぜ。俺も全部出すからみんなも出してくれよ!」と叫んで披露した「怪獣の花唄 -replica-」では銀テープが舞う。1曲ごとに熱狂のピークを更新するような展開だった。

 そして、ラストに披露したのは「replica」。 「みなさんがここに来たとき、人生で出したことのない声だったり、やったこともないようなダンスができるのが、いいなと思ってます。また君たちに会えるのを僕は楽しみにしてる。ありがとう」と告げて、高らかなメロディを力強く歌い上げた。

 アンコールはなく、約1時間半の公演。終わったあとには「圧倒的なものを観た」という余韻が、しばらく残っていた。

 この日のMCでも告知されていたが、Vaundyは7月に幕張メッセ2daysのワンマンライブを、そして11月から2025年1月にかけてはさらなるアリーナツアーの開催を予定している。Vaundyにとっては今回が初のアリーナツアーだったが、大きな会場でのライブにも“到達点”という感慨は全くなかった。むしろ、この先さらに破格の存在になっていく予感が膨らむ一夜だった。


Text by 柴 那典
Photo by 日吉"JP"純平、太田好治

◎セットリスト
【Vaundy one man live ARENA tour “replica ZERO”】
1月21日(日)東京・国立代々木競技場第一体育館
01. ZERO
02. 裸の勇者
03. 美電球
04. 恋風邪にのせて
05. カーニバル
06. 踊り子
07. 常熱
08. 宮
09. そんなbitterな話
10. 黒子
11. NEO JAPAN
12. 不可幸力
13. 呼吸のように
14. Tokimeki
15. 花占い
16. トドメの一撃 feat. Cory Wong
17. CHAINSAW BLOOD
18. 逆光 -replica-
19. 怪獣の花唄 -replica-
20. replica