こうこうと輝く月に重なったすすきの穂、赤く染まったもみじの葉に寄りそう鹿、野に咲く萩や菊のかれんな姿……
今はもう、あまり見なくなってしまった秋の風景かもしれませんが、こうした自然への繊細なまなざしは、日本人ならではのものだと感じられます。
そのルーツは一体どこにあるのでしょう?
それは「琳派(りんぱ)」の絵画などが大きな存在として関係しているようなのです。

日本人の感性を強く感じさせる「琳派」(画像は琳派作品を参考にしたデザイン作品です)
日本人の感性を強く感じさせる「琳派」(画像は琳派作品を参考にしたデザイン作品です)
この記事の写真をすべて見る

さまざまな才能たち──「琳派」のひとびと

「琳派」とは、江戸時代中期の画家・尾形光琳(1658-1716)の名から取られた名称で、日本美術や工芸の大きな流れを形作っています。
その少し前、江戸時代初期に京都の富裕な町衆達、本阿弥光悦(1558-1637)、俵屋宗達(生没年不詳)などが「琳派」と呼ばれる流れを創始しました。
彼らは平安時代の美術や書へのあこがれをベースに和歌巻、障壁画、屏風絵、色紙、陶芸などの作品を生み出しましたが、それらは古典文学の知識を巧みに取り入れ、自然を題に取りながらも大胆なデフォルメと、斬新な装飾性とデザイン感覚を特徴としています。
俵屋宗達「風神雷神屏風」、尾形光琳「燕子花図屏風」などは有名ですね。

「琳派」の展開── 現代のグラフィックデザインにも?

こうした流れは、江戸時代中期になってから、酒井抱一(1761-1828)らによって京都から江戸にも伝えられ新しい展開をとげました。
明治時代になってからも「琳派」の美は浅井忠(1796-1858)らによって再発見され、近代になってもその流れは脈々と続いています。
さらに、昭和の画家・加山又造(1927-2004)や、戦後を代表するグラフィックデザイナー・田中一光(1930-2002)などにも「琳派」の影響が強く認められます。
やはり、その大胆な省略と明快なデザイン感覚の力が大きいのでしょう。
そう思ってみれば、さきごろ物議をかもした2020年東京オリンピック・パラリンピックのロゴマーク(エンブレム)も、ある意味では「琳派」の現代的な感覚ともいえるかもしれません。
現代の私たちは、「琳派」のまなざしのフィルターを通して、風景を眺めているというふうにも考えられるかもしれません。
琳派をテーマにした展覧会はしばしば開かれますが、現在、東京・山種美術館で開かれています。
【特別展】琳派400年記念 琳派と秋の彩り
会期:2015年9月1日(火曜)~10月25日(日曜)
時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
会場:山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
休館日:月曜(ただし、9/21、10/12は開館、9/24、10/13は休館)
※入館料、出展作品、イベント情報等の詳細は関連リンク参照
芸術の秋にちなみ、興味のある人はぜひ足を運んでみては?