さらに、口臭を抑える効果についても検証しました。口臭の原因となるP.g 菌の培養液にAD-PSJを含有したレジンを入れます。これを2日間つけるなどした後に、口臭測定装置にかけ、においの元となる「メチルメルカプタン」という物質を測定しました。その結果、AD-PSJを添加したレジンでは、添加しないレジンに比べ、メチルメルカプタンの検出量は非常に少なく、大きな消臭効果が認められました。
「AD-PSJ含有量が1.0%のものでも8分の1以下に検出量が抑えられました。実用化に向け、まずは技工所に依頼して、ナイトガード(夜間に歯ぎしりなどの防止のために使用するマウスピース)を作りました。これを被験者に装着してもらい、翌朝の口臭測定をおこなったところ、装着しない場合に比べ、口臭成分が約半分になりました」(同)
保険収載を目標に。将来は認知症予防にも役立てたい
浜田さん自身もナイトガードを使っていますが、「マスクをしているときに、口臭がまったく感じられなくなりました。また、夜、寝ている間に口の細菌が繁殖すると、起きた時に口の中がネバついていますが、そのようなこともほとんどありません」と話します。
現在、静菌義歯やナイトガードは、入れ歯の口臭に悩む人や入れ歯の清掃が十分にできず、口の中が不衛生になりやすい人(口腔カンジダ症などに悩んでいる人)などを中心に、処方をしていますが、将来はインプラントを入れた後に起こりやすい、歯ぐきへの細菌感染やむし歯予防に使えるように、研究を進めていきたい、と浜田さんは言います。
「また、静菌義歯は認知症予防にも役立つのではないかと期待しています。アルツハイマー病患者の脳内から歯周病菌のP.g菌(前出)が産生する毒素が検出されるなど、認知症と歯周病の関係を示唆する研究が多く報告されているからです。まずは患者さんに使っていただきながらデータを蓄積し、保険収載を目標に、先の課題にも取り組んでいきたいと思います」