風や光の中で、青々とした眼に優しい緑の中、手先の触感を研ぎ澄ませて茶の葉を摘む。その摘みたての香りに包まれて茶葉を炒り、そして揉む。そんな茶摘みと製茶を楽しめる場所があります。

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マイ茶づくりが楽しめる、清川の「夢見る茶畑」へ

家には急須は無く、お茶は毎日ペットボトルで飲むものだという人も多いかも知れませんね。何を隠そう団地育ちの筆者も、茶摘みや製茶は別世界の出来事でした。つい最近まで、田舎では、お茶は庭のお茶の木から自分たちで摘んで製茶して飲んでいたと聞き、驚いたものでした。
そんなひ弱な現代人にもお誘いがあり、連れ立って訪れたのは、神奈川県の本厚木駅からバスで約40分の清川村。「夢見る茶畑」と名付けられた、茶摘み体験のできる、5.5aの完全自然栽培の茶畑です。化学的な施肥・防除は一切行わず、そして機械も利用しない茶園づくりを行い、茶畑体験を提案しています。
今年は5月2日でしたが、茶摘みの季節の八十八夜はご存じですね。けれども自然相手ですので、ベストな新芽の時期は、年と場所によって変わります。此処清川村は標高の関係もあり、少し遅らせた時期に日取りを決めましたが、今年は5月から真夏日が相次ぎ、その間に芽がぐんぐん伸びたそうです。

風の中、一芯二葉を摘む忘我の茶摘み

それでも、木を機械で切り揃えない「夢見る茶畑」なので、次々に新芽が出てきます。一同は「夢見る茶畑」の上原さん、阿部さんにご指導いただき、わくわくと茶摘み開始です。
お茶摘みは、お茶の木の枝の先端の、「一芯二葉」を摘む作業。「芯」は、まだ葉が開いていない芽の状態の葉で、写真のように、そこから下へと互い違いに葉がついています。この一芯二葉を指先でつまみ、ちょっとひねってぷちっと摘むのです。柔らかい葉だと力を込めなくても、ぷちぷち摘むことができますよ。
青空の下、風を受けながら次々に摘むうちに忘我な快感に包まれ、たいへん爽やかな心地となります。無農薬ですので、天道虫やちいさなバッタとも、時々ご対面。久々に、虫の綺麗な背中をじっと眺める非日常も良いものです。

一芯二葉(「夢見る茶畑」facebookページより
一芯二葉(「夢見る茶畑」facebookページより

アロマテラピー感満載の製茶。お茶の香りのお布団に包まれる如く

籠いっぱいになったら、近くの自治体施設の大きな広い料理室に移動。釜炒り→揉捻(じゅうねん)→乾燥の製茶作業に入ります。
釜炒りは、殺青といって酸化酵素の活性を止める作業とのこと。釜で摘んだ葉を炒るのですが、厚手の軍手をして手で返して、押して、ほぐしていきますよ。約200℃に熱しますので、これが本気で熱い。降参すると、阿部さんが交代して仕上げてくれます。神業的な手技に、一同はうっとり。
次は、炒った茶葉を揉む、揉捻です。揉捻は、水分を均一させて形を整え、成分が出やすくするための作業。粘土で塊をごろごろ転がしながら太い筒を作るイメージで、コツがつかめました。練って、揉んで、ぐるぐるごろごろ。茶摘みからずっと、手先と掌の感覚が研ぎ澄まされていきます。
乾燥は、台湾から購入した、大きな竹製の乾燥機で行います。高温加工されて辺りに満ちるお茶の香りに包まれて、「あー幸せ」気分は最高潮。

五感満載のマイ茶づくり、沁みとおる甘い風味

順番に作業するので、それぞれ途中でお昼を食べたり、乾燥を待ちながら上原さんにお抹茶お絵かきを教えていただいたり。和気藹々とお喋りが弾みました。ほとんど小学生の校外学習気分の一同からは、究極のデトックス&リラクゼーションだ、と歓喜の声が相次ぎました。出来上がったマイ茶を淹れて味わうと、香り高くてほんのり甘い風味が身体に沁み通ります。
機械を入れない、無農薬自然栽培の「夢見る茶畑」では、一年中茶摘みができます。6月は二番茶の季節です。ご興味をもったかたは、事前連絡の上、どうぞ五感満載の茶摘みと製茶をお楽しみくださいね。