国際チェス連盟(FIDE)は8月、トランスジェンダー選手に対する新たな方針を発表し、世界中で波紋を広げた。FIDEに登録している性別を男性から女性に変更したトランスジェンダー女性は、当面の間、公式の女子大会には出場できないというのだ。水泳や陸上など他のスポーツでも、トランスジェンダー選手に対して似たような規定を定める動きがあるが、“頭脳戦”のチェスにおいて、なぜ性別によって扱いを変えるのか。ボードゲーム界に根を下ろす、男女格差の実態を取材した。
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「今回のこの禁止はばかげているし、女性を侮辱するものだ」
「私は競技者としてチェスをしていた間ずっと、女の脳は男より小さい、そもそも女がチェスをするなどあってはならないと、そう言われ続けた」
これらは、今回のFIDEの発表を受けて英BBCが取り上げた、元チェスプレーヤーの女性の声だ。女子は男子より弱いと暗に示したような決定を、女性蔑視と受け取った各国の選手やファンからは、批判の声が上がっているという。
チェスは激しい体の動きは必要なく、男女間の身体能力の差は影響しないはずだ。にもかかわらず、なぜ性別に関するルールを定める必要があるのか? 日本チェス連盟に取材すると、「男女にレベルの差があるのは事実」との回答が返ってきた。