GWも終わり夏に向けて気温の上昇する季節になってきました。
全国的にもたくさんの山が雪解けを終え、山開きを迎え、緑が生い茂るのは目前です。
5月から7月にかけて、高地だけでなく低い湿地に咲く水芭蕉が、そろそろ開花のシーズンを迎えます。毎年5月中旬に尾瀬で行われる山開きの式典では、残雪とともにたくさんの水芭蕉を見ることができます。

群生する水芭蕉(Photo by Yusuke Kikuchi)
群生する水芭蕉(Photo by Yusuke Kikuchi)
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水芭蕉の白い部分は花じゃない

水芭蕉の白い部分は実は花ではありません。仏炎苞(ぶつえんぼう)と呼ばれており、葉の変形したものです。この白い庖(ほう)は花を守るためのものであり、真ん中の黄色い部分が小さな花がたくさん集まった「花」なのです。
天に向かって伸びる大ぶりな葉の汁には、肌につくとかゆみや水ぶくれを起こす成分が含まれるので、触れる際には注意が必要です。
そんな水芭蕉を好んで食べる動物が、本州に生息するツキノワグマです。冬眠後に体内の老廃物を排出するために嘔吐剤・下剤として食べているそうです。また、水芭蕉の種は栄養が豊富なので特にクマの大好物。クマの糞で水芭蕉の種が運ばれていくこともあるそうなので、春先の水芭蕉が群生する付近には、クマに注意が必要かもしれません。
参考:「植物物生態観察図鑑: おどろき編(全国農村教育協会)」

袴腰岳の水芭蕉(Photo by Yusuke Kikuchi)
袴腰岳の水芭蕉(Photo by Yusuke Kikuchi)

尾瀬だけじゃない水芭蕉の植生

水芭蕉はロシアのサハリンやシベリア東部、日本では北海道と中部地方以北の日本海側に分布しており、主に山地帯から亜高山帯の湿原や林下の湿地に植生しています。和名「バショウ」は、芭蕉布の材料に利用されているイトバショウの葉に似ていることに由来します。
上の写真は北海道の南部(袴腰岳)の登山道の様子です。今まさに水芭蕉が真っ盛り。この袴腰岳はそれほど高地ではありませんが、湿地であれば水芭蕉の群生が見られます。
このような群生でなくても、まだ残雪がみられる時期でひっそりと咲いている姿は力強ささえも感じます。

意外と知られていない花の写真集:ロバート・メイプルソープの「Flowers」

花の写真集はたくさんありますが、有名な写真家の花だけの写真集もあります。
ロバート・メイプルソープはニューヨークの写真家であり、「パンクの女王」ことパティ・スミスと暮らしていたことで有名です。1970年代のロックバンドのジャケットやライブ写真など、人物を写した作品が有名です。しかし1989年に亡くなった彼が、多くの花の写真を残していたことはあまり知られていません。そんな花の写真だけを集めた作品集が「Flowers」です。
モノクロで撮られた美しい花の写真が多く、花そのものの美しさが感じられる1冊です。
この写真集には水芭蕉を写した作品も収録されています。群生しているものよりも、一輪の花を写した作品がほとんどなので、花そのものの個性が映し出され、いつもと違った楽しみ方ができそうですね。
参考:「Flowers: Mapplethorpe(Schirmer/Mosel Verlag Gmbh; Bilingual版)」
各地の山が夏へと向かうこの時期は、水芭蕉だけでなく多くの高山植物を見ることができます。登山といっても、しっかりとした装備が必要な場所だけはありません。ハイキング程度の準備で登れる、なだらかな山も多いので、週末は近隣の山まで足をのばし、自然の花の姿を眺めるのも良いかもしれません。