アプリを起動させてアナウンスを聞き取らせると、英語になって情報が表示された
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日本語にも対応しており、聴覚障がい者に向けたサービスも期待されている
イオンモールでの実験は、幕張新都心店と成田店で実施中だ

 近年、日本に訪れる外国人観光客の数が急速に増えている。日本政府観光局の調査によると、2014年の外国人観光客の数は1300万人を超え、過去最高を更新した。

 2020年には東京オリンピックを迎え、今後さらなる観光客数の増加が見込まれる。そこで、日本語のアナウンスを外国人観光客に向けて、多言語化して伝えていくかが急務となっている。

 こうした需要を受けて開発されたアプリが、ヤマハの「おもてなしガイド」だ。これは、日本語のアナウンスが流れているところで、スマートフォンでこのアプリを起動させると、さまざまな言語に翻訳されてアプリ上に表示される。

 例えば、ショッピングモールの案内や、バスの行き先案内といったアナウンスやナレーションをそれぞれの母国語で確認できる。翻訳にあたってはインターネットを使用しないので、旅行中で通信機能をオフにしている観光客でも利用できるのが特徴だ。

 恩恵を受けられるのは外国人だけではない。このアナウンスを文字で案内する技術は日本語にも対応しており、耳が不自由な高齢者や、聴覚障がい者のサポートにも提供していく。また、健常者に対しても、店内アナウンスと連動した地図やクーポンの配信や、下車したい駅のアナウンスが鳴ると振動して、乗り過ごしを防止するといった利用方法が想定されている。

 現在はまだ開発中の段階で、イオンモール幕張新都心店とイオンモール成田店の2店舗で実証実験を行っている。また、5月15日からは東急バス系列が運行する代官山循環バスの車内でも同様の実験が行われる予定だ。実験はいずれも9月30日まで実施する。言語は、主に日本語・英語・中国語などに対応している。

 今月1日には、イオンモール幕張新都心店で体験会が行われた。会に招かれた経済産業省・情報通信機器課の広瀬健治氏は、「このプロジェクトは聴覚障がい者や訪日外国人、高齢者の大きな悩みどころを同時に解決しうる非常に素晴らしいテクノロジーが集まっている。経済産業省としては、このような技術がどんどん世の中に広まっていくことを歓迎している」と期待の言葉を述べた。

 このほか体験会では、iPhoneと館内アナウンスを使ったデモンストレーションが行われた。iPhoneは2つ用意され、それぞれ日本語の設定のものと、英語の設定のもの。実際に館内アナウンスが流れると、アプリ上には文字が表示された。表示される言語はiPhone本体の設定で変わり、英語であれば英語で表示される仕組みだ。少しの待ち時間でアナウンスが翻訳して表示されたのが印象的だった。

 この「おもてなしガイド」は、iOS版が無料で利用できる。Android版の提供は7月からの予定。この技術が気になる人は、実証実験中の場所に訪れてみてはいかがだろうか。

(ライター・河嶌太郎)

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