独特の香りとシャキシャキした食感が魅力のミョウガは、冷や奴やそうめんなどの薬味に欠かせない野菜です。
酢の物や味噌汁の具にしても美味しく、料理にピンク色の彩りを添えてくれます。スーパーには一年中出まわっているミョウガですが、これからの季節・夏から秋にかけて旬を迎えます。
ほんの少量添えるだけで食材の生臭さや油っこさをやわらげ、強い香りで食欲を増す効果があるミョウガには、夏バテ防止や風邪の予防などの効果もあるといわれています。
そんなミョウガと、私たちの食卓との関わりについて調べてみました。
放っておいてもどんどん育つ、手間いらずの野菜
ミョウガは、ショウガ科の多年草。原産地は東アジアで、現在の中国で栽培品種化されたものが各地に広まったとされており、日本をはじめ中国、朝鮮半島などに自生しています。
「ミョウガを食べるのは日本人だけ」とも言われますが、中国でも地域によっては炒め物などに使うのだそう。
とはいえ、中国のミョウガはもっぱら漢方薬に使われるそうで、食材としてミョウガを栽培しているのは日本だけとか。せっかくの美味しいミョウガ、もっと世界中で愛されるようになったらうれしいですね。
温暖・湿潤な気候を好むミョウガですが、気候などの条件が合えば、すぐに「野生化」します。
自生しているミョウガのほとんどが、人家のある場所の近くに生えているそうなので、庭にミョウガを植えていて、忘れた頃に「あれっ、こんなところからミョウガが……」という経験をもつ方も多いのではないでしょうか。
手間をかけなくとも、いつのまにか(?)生えてくるミョウガは、庶民の暮らしの強い味方なのです。
つぼみに葉っぱ、茎まで食べられます
私たちが普通食べているあのコロンと丸いミョウガは、ミョウガの花のつぼみの部分。地上に茂っている葉の部分ではなく、土中に伸びた地下茎から直接つぼみが出てくるのを摘み取ります。
また、本来は地上に出ている茎の部分を、日光が当たらないよう土をかけて軟化させて育てたものを「ミョウガタケ」と呼びます。その名のとおり、白く細長い見た目は、まるでタケノコのよう。ミョウガのつぼみよりも一足早く、春に出まわる食材です。
ミョウガの葉も、昔から食用とされてきました。代表的なのは、岐阜県に伝わる「みょうがぼち(みょうが餅)」や、熊本県の「みょうが饅頭」。どちらも、みずみずしいミョウガの若葉で甘い生地をくるんだ初夏の味覚です。
ミョウガの香りは「森林浴」と同じ効果?
ミョウガの、あの独特の香りの正体は「α-ピネン」という香り成分。
ストレスの緩和をはじめ、循環の改善、免疫機能の改善などの効果があるといわれます。
この「α-ピネン」は、樹木が発散する「森林揮発性物質」にも含まれているとか。森の中を散策して、木々の香りに癒されてリラックス……そんな想像をしながら、ミョウガ料理を楽しむのも面白そうです。
ちなみに、ミョウガの香りをより楽しむためのポイントは「切り方」といわれます。ミョウガはタテに繊維が走っているので、その繊維を断ち切るように「ヨコに切る」と香りが引き立ちます。繊維に沿って「タテに切る」ようにすれば、シャキシャキした食感がいっそう楽しめますよ。
いつものおかずにミョウガをプラスして、爽やかな香りと食感をぜひ味わってみてくださいね!
参考:農山漁村文化協会編「地域食材大百科」
NHK出版「別冊きょうの料理 薬味の力」