両大戦間のパリに暮らしたアメリカ人の作家・ジャーナリストによる随筆。文学者・吉田健一が絶賛した名作の本邦初訳だ。 著者が住んだユシェット通りの個性豊かな住人たちを描くのだが、人情味あふれるパリの下町を写す筆致は、次第に暗い影につつまれる。それもそのはず、著者がパリに降りたったのは1923年で、当地を離れたのは40年、パリがドイツに占領された年だ。原書刊行は42年、占領期の真っ直中。著者が哀惜…

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