moumoon 話題の『暗殺教室』EDテーマや“moumoonの今”語る「もうすぐ立って、すごく光り出す気がします。裸でね(笑)」
moumoon 話題の『暗殺教室』EDテーマや“moumoonの今”語る「もうすぐ立って、すごく光り出す気がします。裸でね(笑)」
この記事の写真をすべて見る

 ニューシングル『Hello,shooting-star』をリリースしたばかりのmoumoonが、今作へ込めた想いや“moumoonの今”について語ってくれた。

<アニメ『暗殺教室』エンディングテーマ YUKAが涙するMV>

 アニメ『暗殺教室』のエンディングテーマである今作は、YUKA(vo)のどこか懐かしくなる情緒的な歌詞と歌声とMASAKI(g,key)の優しくもキャッチーな曲調が、「美しい歌」「ほっこりする」と日本はもちろん海外のユーザーの間でも話題になっている。ミュージックビデオは、歌詞にもある「閉ざした瞼」の中に見える、様々な世界や色、感情をYUKA本人が表現(彼女が涙するシーンも)。目をつむると見える懐かしい景色、温かな情景、目を開けるとそれは今はもう存在しない風景かもしれない……。ただしっかりと自分の中では生きている。そんな誰しもが持っている心の故郷を表現した、豊かな作品に仕上がっている。

 そんな注目度の高い新作リリースに伴い、moumoonの2人が今音楽で表現していこうとしているもの。今のmoumoonは何を目指しているのか、真っ直ぐに語った。

◎moumoon(YUKA/MASAKI)インタビュー

<「解散するんじゃないかと思いましたよ」って言われて(笑)>

--いつかは死ぬから“死ぬ前に聴きたい音を創る”と制作し、昨年発表した『LOVE before we DIE』(http://bit.ly/1aodSxH)はどんな作品になったと感じています?
YUKA:あのアルバムは全部詰め込むつもりで創っていたので……
MASAKI:生まれ変わったぐらいの感覚だよね。
YUKA:一回死んだっていうか(笑)。本当にそんな感じがしました。これが出来上がるんだったら、自分の中のものが全部無くなってもいいっていう気持ちだったので。それを創り終わったときに、たむらぱんちゃんとの対談(http://bit.ly/1dx4qbG)で「このあと、どうすんの?」って聞かれて、どうなるのか私も分からなくて。でもあのアルバムを創ったことでmoumoonはすごく変わったと思う。
MASAKI:ライブもそうですけど、すごく変わったね。すごく人間味がある、剥き出しのライブが出来るようになったんで、ひとつまた枠を、殻を壊せたかなと思いました。
YUKA:それぐらい生まれ変わった感じはあって、インディーズデビュー前から観てくれているラジオのディレクターさんから「あれ出したとき、解散するんじゃないかと思いましたよ」って言われて(笑)。テーマもそうだし、懸けてる想いが凄いから、「ちょっとビビった」って。

<「そろそろディープな曲が創りたくてたまらない」本間律子との出逢い>

--あのアルバムの数年前から表現への貪欲さが明らかに増してましたよね。芸術性の高いものを打ち出したり、もしかしたらお客さんがポカーンかもしれないところまで踏み込む機会が増えました。
YUKA:いろんな顔があるmoumoonなんですけど、ポップで馴染みやすい感じの楽曲とディープな楽曲、そのバランスを考え始めるようになったんです。ラーメンとか食べながら「そろそろディープな曲が創りたくてたまらない」みたいなことをMASAKIくんに打ち明けたことがあって、それをしないと欲求不満になってきたって。その気持ちを理解してくれて、同じ時期に本間律子さんというライブプロデューサーとの出逢いがあって、そこで“ライブを創る”ということについて勉強させてもらったんです。ちょっと攻め攻めでポカーンとなるかもしれないけど、表現するということをより深める為に。
MASAKI:一昨年のツアーとその年の【中秋の名月】を一緒に仕事させてもらって。でも去年のツアーは一緒にはやってないんです。
YUKA:本間さんのプロデューサー視点と自分たちの出したい側面というところで、もちろんぶつかることもあって、バチバチすることもあったんですけど(笑)。つまり、そこに私たちの自我がちゃんとあったんですよね。だから『LOVE before we DIE』を創ってツアーやることになったときは、プロデューサーさんから学んだところを活かしつつ、自分たちだけでどこまで出来るのかっていうところに挑戦しようと思って。

<「それも含めてmoumoonなんだよ」っていうのを打ち明けられた>

--その去年のツアー。異様に漲っている女の子がステージに立ってて……
一同:(笑)
--全身全霊で音楽を体現する女性って何人かいるじゃないですか。吉田美和とかYUKIとか木村カエラとか、全部をステージに出せる人。その領域に踏み込み出したなって衝撃を受けました。
YUKA:ありがとうございます!
MASAKI:ツアー終盤は「なんだこれ!?」っていう感じになってましたよ(笑)。もっと全身で表現していいんだってことを分かったきたんでしょうね。「もっと出せる、もっと出せる!」って毎公演やってたんで。
YUKA:単純な話なんですけど、あのツアーは「moumoonをやっててすごく楽しい」って思えて、愛情がより深まるような気持ちになったし、ちょっと引いた人もいるかもしれないけど(笑)、「あれ? ふわふわしてない」って。でもお客さんにうわぁーって出したときに、それをスッて受け止めてくれたというか、受け入れて、飲み込んでくれた。すごく繋がった瞬間があったんですよね。もちろんいろんな感じ方があるし、「今回のmoumoonは私が思っていたmoumoonと違いました」って意見もあったと思うんですけど(笑)、「それも含めてmoumoonなんだよ」っていうのを打ち明けられた気がします。

<「でも泣いてるテイクしかない」ってなって(笑)>

--今回のシングル『Hello,shooting-star』はどのような背景があって生まれた作品なんでしょう?
YUKA:自分の中にあるもどかしくて、モヤモヤしてて、どうしていいか分からないものを吐き出しながら書いて、感情のままに突き進んで書き終わったような気がしているんですけど……そうですね、すごくもがいてました。ベッドで「うわぁー!」ってなりながら(笑)、時には号泣しながら、「ちくしょー、なんてもどかしいんだ!」みたいな今の自分の気持ちを書いたつもりなんですけど、その歌詞とサウンドと歌声と全部が合わさったときに何とも言えない、どうしようもない気持ちになる箇所が結構あって、なんでか分からないんですけど、レコーディングでもライブでも泣けてきて。
--MV(http://bit.ly/1DbzOEr)でも泣いてますよね。
YUKA:そうなんですよねー。あれも泣いちゃったんですよ。監督が「YUKAはここで泣くから」って思って、撮影中、必ず2番のサビぐらいから曲を流すんです。で、別に「泣いてください」と言われた訳でもなくて、でもそこから次を歌い出そうとすると涙しか出てこなくて、そうなるとどのシーンにも涙しか映ってなくて、「これ、泣いてるのをプッシュしているみたいで良くないんじゃないですか」って編集のときに言ったんですけど、「でも泣いてるテイクしかない」ってなって(笑)。

<夢を見る気持ちと流れ星を探す気持ちっていうのはすごく似てる>

--YUKAさんはこの曲で何を伝えたかったんでしょうね。
YUKA:このストーリーを書き始めようと思ったとき、ベランダで流れ星を見たんですよ。それはとても自分の中では大きな意味があって、小さいときにはパッと空を見上げると流れ星が流れて、それがよくあったから、私は自分にしかない魔法があると思っていたんです。でも大人になっていくにつれて、空を眺める時間は変わらないのに流れ星が見れなくなって、子供のときに持っていた特別なものが消えていっちゃうような、ちょっとした恐怖に似たものもあって。それをもどかしく感じていたんですけど、ふと流れ星が見れたとき、それを歌にしてみようと思ったんです。
--なるほど。
YUKA:曲を作りたいなとか、歌詞を書いて歌うことに希望を持ってて、夢を持ってて、そのときに流れ星が見れたから、「この情熱よ、消えないで」というか、夢を見る気持ちと流れ星を探す気持ちっていうのはすごく似てるから、だから私は夢に一直線でありたいってことを曲にしたいなと思って。で、そうある自分のそばにいたり、大切だなと思う人が夢に向かって一生懸命頑張ってる姿を見ると、「私も夢を見ることやめたくない」って思うし、それが余計に切なくて。「あー、ここから動き出せない私はなんて不甲斐ないんだろう」みたいな超やるせない気持ちなんですけど、最終的にはやっぱり光っていてほしいし、流れ星が見えたってことは大丈夫。っていう方向に進み出せるエンディングになったんです。それはまさに自分の気持ちと同じで。長くなりましたが、そんな曲です(笑)。

<YUKAから見たMASAKI、MASAKIから見たYUKA「モンスターですよ」>

--そんな曲を生み出したmoumoonの2人なんですが、お互いがお互いをどんなミュージシャンだと思っているのか、聞かせて下さい。
YUKA:私から見たMASAKIくんは……すごく変わってると思うんです。私と違ってバッサリと人間臭さとかを押し出してこないのに、曲にすべてが込められている。私はどっちかと言うと、全部が全部そういう風になっちゃうというか、感情的だったりする。でもMASAKIくんはアーティストの面倒臭さとかエゴとかがなくて、でも曲を聴くと人間臭さが詰まってて、だから私も揺さぶられて、景色が見えて、色と言葉が出てくるし、そこで全部出せるのって凄いなと憧れています。
--では、MASAKIさんはYUKAさんをどんなミュージシャンだと思ってますか?
MASAKI:表現するべきことがいっぱいあって、それ以外の仕事はしちゃダメだなって思うぐらい(笑)表現者だし、得体の知れない何かを持ってますね。多分そういう人たち特有のもの。世の中にビッグな人たちはいっぱいいますけど、そういう人たちと同じものを持っている人。だからモンスターですよ。何とかそれをYUKAちゃんが100%表現できるように一緒にやっていこうって感じですね、ずっと。選ばれた人なんだろうなって思います。凄い人です。

<『LOVE before we DIE』の後にそのまま死ななくて良かった(笑)>

--そんな2人にとってmoumoonはどんな存在になっていますか?
YUKA:今は赤ちゃんみたいです。どれだけのあいだ赤ちゃんなのか分からないし、このままずっと赤ちゃんかもしれないけど、moumoonは今赤ちゃんで、何にでもなれて、それを私たちが育ててる感じなんです。今はハイハイしてるぐらいかな? でも多分もうすぐ立って、すごく光り出す気がします。裸でね(笑)。
--それが次のアルバムかもしれないし?
YUKA:そんな予感がします。まだヨチヨチ歩きなんで怖いこともいっぱいあるけど、でも確かなものをより感じられる今なので、『LOVE before we DIE』の後にそのまま死ななくて良かった(笑)。

取材&テキスト:平賀哲雄