これまで生きてきた中で、一度たりとも「安定したい」と思ったことはない。安住の地を求めたこともない。ただ見たい、聞きたい、会いたい、触りたい、食べたい、嗅ぎたい――。純粋な好奇心の赴くままに旅して、唄って、演じて、表現して、生きてきた。そうして、年齢を重ねながら、心の中に記憶と経験という宝物を増やしてきた。
エネルギーの源はどこにあるかと訊くと、「欲張りなんじゃないですか」と、サバサバした口調で言う。
「何でも、『これ、面白そう!』と思ったらやってみたくなる。もともとそういう質(たち)なんです。だから、『やらなきゃよかった』って、あとになって後悔したことも、仕事を始めたばかりの頃は結構ありました(笑)。最近は、物事の善し悪しを嗅ぎ分ける力がついてきたのか、仕事のたびに宝物が増えていく、そんな感じでしょうか」
ライフワークとしては、25年前からクリエーションのすべてを手がけるコンセプチュアルアートシアター「印象派」がある。昨年は、パリ・ルーヴル美術館でも公演し、成功を収めた。
「でも、何をしていても満足はありません。何かやると、必ず『次はこうしよう』と思ってしまう。死ぬまで続くのですね(笑)」
※週刊朝日 2018年3月9日号