手にとったのは、「final Heaven VIII FI-HE8BSS3」という商品。お値段は店頭価格で7万350円也(税込み)。安め1Kの家賃くらいのお値段だ。

 実際つけてみて驚いたのは、まず音量をそこまで上げなくていいということ。遮音性が高く、ひとつひとつの音がしっかり耳に届くので、普段聞いている音量よりもかなり低い音で十分なのだ。さらに、音が広がる感覚が大きく違うのを感じた。耳を通して音が遠くのほうまで響いているように感じられ、歌声も伸びやかに聞こえる。

「このイヤホンはコンサートホールやライブ会場で聞いているような感覚が楽しめるんです。高音域がよく聞こえ、臨場感があります。この機種は羽生さんも購入されたんですよ」(松田さん)

 こちらはさまざまな音がバランスよく聞こえるタイプなので、「羽生さんはプライベート用に購入されたのかもしれませんね」と松田さん。確かに、ライブ感のある音楽は気分転換にぴったりかもしれない。

 続いて試聴したのは、既製品(カスタム品ではないもの)では高額商品にあたる「JH AUDIO Angie Universal Fit - JH Audio THE SIRENS SERIES」という商品。お値段は店頭価格で14万2200円(税込み)。割としっかりしたノートパソコン並みだ。

 こちらで特徴的なのは、音にクリア感があるということ。ピアノなど、繊細な音の細かなニュアンスまでよく聞こえる印象だ。

「これは澄み切った音が特徴ですね。曲の制作時の音を忠実に再現しているので、アーティストの作った音楽のよさがよりわかると思います」(松田さん)

 最後に聞かせてもらったのは、カスタムイヤホンの「FitEar Aya」という商品だ。実はこちらも、羽生選手がオーダーしたイヤホンだという。

 こちらは見た目からしてかなり特徴的である。イヤホンのヘッド部分というか、耳につける部分がかなり大きい。「つけていて重くないのだろうか……」と思いながら装着してみると、フィット感がかなりあり、ヘッド部分のちょっとした重みもプラスに働いて心地よい装着感だ。

 そして音のほうはというと、音ひとつひとつが伸びやかに感じられ、響きも深いように思えた。低音から高音までクリアに聞こえ、頭の後ろまで音が響く感じがする。そして何より驚いたのが、はずしたときだ。遮音性が高いらしく、外した瞬間になんだか違う空間に来たような感覚に陥った。それほど、イヤホンをしている間は音楽の世界に入り込むことができた。

 こちらお値段は12万4900円となかなかの高級品。しかし選手生活に音楽が欠かせない羽生選手が購入するだけあって、値段に見合った質の音を提供してくれる一品だった。このほかにも17万円以上もする「FiTEAR MH335DW」という商品を購入するなど、羽生選手の音楽への強いこだわりを感じる事ができた。

 ちなみに先の7万円の商品「final Heaven VIII FI-HE8BSS3」は、羽生選手の愛用商品ということで、ファンの女性が買っていくことも多いのだとか。そうしたことを入り口に、だんだんと音質の追求にはまっていく人も少なくないという。

 記者も試聴を繰り返すうちに、いつの間にか自分に合ったイヤホンを探してしまっていた。同店は「イヤホンのテーマパーク」と銘打っているが、まさに試聴だけで数時間楽しめそうな、「音質」の世界にはまり込める空間になっていた。

(価格は時期によって変動する可能性あり)

(ライター・横田 泉)