●自分の仕事を壊せる人が、次の時代をつくる

(1)これからの時代をどう読むか

 オックスフォードの准教授によると、テクノロジーの進歩により、あと10年で世の中の半分の職業はなくなるという。AIに仕事を奪われないように意識したいのは、「自分の仕事をなくしてしまうこと」である。自分の仕事をテクノロジーに置き換えて効率化し、もっと速くできる方法や、それによって生まれた余力で新たにどんな仕事ができるかを考えてみることを著者は薦めている。過去のやり方に固執するのか、それともイノベーションを起こす側になるのかによって、今後の展開が大きく変わる。

 これからの時代は過去の成功例よりも、これから何があり得るのかという情報を見ることが重要となる。すでに金融の世界では、AIでトレーディングをするロボ・アドバイザーが活用されており、うまくリスクヘッジをして利益をあげている。これがもっと普及すると、普通の大学生でもプロ並みの投資ができるようになり、ファイナンシャルアドバイザーの仕事もなくなるかもしれない。そこで、自動化できないものは何か、自分の役割をいかに変えれば儲けにつながるかを考える必要がある。

(2)細かな技術はわからなくても波には乗れる

 自分のいる業界のITトレンド事情を知っておくことはますます重要になる。ニュースアプリを使えば効率的に関連情報を集められる。話題のアプリはとりあえず試してみるなど、意識して最新のテクノロジーに触れておくことがカギだ。

 もちろん自分でテクノロジーの技術を細かく学ぶ必要はなく、アイデアを思いついたら、エンジニアやプログラマーに依頼すればいい。技術的なことがわからなくても、実現できることはたくさんあるはずだ。

〈一読のすすめ〉

 本書から得られるのは、仕事を速く、効率よく終えて、最大の成果を生み出すためのテクニックだけではない。著者のアドバイスの数々は、仕事に対する考え方そのものに、間違いなくプラスの影響を与えてくれる。世の中の変化の波に乗り遅れないように、本書を武器に、今こそ仕事への向き合い方を変えてみてはいかがだろうか。

〈著者情報〉

ピョートル・フェリークス・グジバチ(Grzywacz, Piotr Feliks)

 ポーランド生まれ。ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、2000年に来日。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年よりモルガン・スタンレーにてラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデント、2011年よりグーグルにて、アジアパシフィックでのピープルディベロップメント、さらに2014年からは、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は、独立して2社を経営。プロノイア社では、国内外の様々な企業の戦略、イノベーション、管理職育成、組織開発のコンサルティングを行なう。2社目のモティファイは新しい働き方といい会社づくりを支援する人事ソフトベンチャー。多国籍のメンバーやパートナーとともに、グローバルにサービスを展開している。日本在住16年。合気道や禅にも詳しい。