つまり、コンピューター対プロ棋士の戦いにおいて、最初はプロ棋士も手探りだったものが、いまでは変化しているのだ。確かにプロ棋士に勝利することも珍しくはないコンピューター側だが、その限界にも話は及んだ。コンピューターは、1秒の間に数百万もの局面を検索することができる。その中で、「過去の棋譜から、勝率が最も高い手」を選び出すという。つまり、あくまでも過去の棋譜がベースになっているのだ。山川氏は「人工知能は手を読むのは得意だが、新しい手を考え出すことはできない」と述べる一方、「人間は、さまざまな指し手をグループ分けして効率良く考えている。その仕組みはよくわかっていなくて、“直感”と呼ばれることもある」と指摘した。

 ソフトのある種の“バグ”を付くような手については、開発者とプロ棋士で意見が分かれた。コンピューター側の平岡氏が「正直なところ、もっと面白い勝負が見たかった。勝つために最善の手を尽くしたにすぎないけれど、そこは残念だった」と発言すると、これに対して、プロ棋士の森内氏は「プロ棋士の心理として、勝ちたいという気持ちが強い。そこに“こうすれば勝てる”という指し手があれば、それを選ぶことはなにも問題はない」と反論した。

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