ゼロを1にするチャレンジをしていきたいと話す田中宏彰氏
ゼロを1にするチャレンジをしていきたいと話す田中宏彰氏
『ebica予約台帳』の操作画面
『ebica予約台帳』の操作画面

 いまや、ホテルの宿泊予約はネット予約が当たり前だ。新幹線などの鉄道、飛行機も同じく。映画館でも席を事前にネット予約できる。ところが、飲食店は違う。ネットでよさそうな店を見付けても、予約はいまだに電話をかける。店はその予約をノートに書き込んで管理する。なんともアナログなのだ。そこに一石を投じているのが、『ebica(エビカ)予約台帳』というサービスである。

 客の基本情報や嗜好、来店履歴等を登録し蓄積するので、例えば入ったばかりのアルバイトでも、誰が常連さんなのかがわかるのだ。このサービスを提供している株式会社エビソルの田中宏彰代表取締役は次のように語る。

「例えばホテルならば、その部屋が埋まっているかどうかというゼロか1かの違いしかない。ところが、飲食店の場合、お客さまが回転するのでサービスの在庫管理が複雑なのです。また、ホテルと違って、経営規模がそれほど大きくないことが多いので、大規模なITインフラを導入しにくい。そういったことが、いまだに電話予約が主流ということの背景にあると思います」

 田中氏は、もともと株式会社インテリジェンスの執行役員を務めていた。長年、人材サービスで培った経験も生きているという。

「人材サービスも、採用ならばネットで募集して、面接や説明会に参加してもらう。今でいうO2O(online to offline)のビジネス。いまやっているサービスも、ネットで店を見付けたら、予約して店に行くという似たようなスタイルなんだと思います」

 いまどきはアプリによるコンシューマ向けサービスがもてはやされている。しかし『ebica予約台帳』はその名が示すとおり、店舗向けのサービスだ。「店の予約ができるコンシューマサービス」は考えなかったのだろうか。

「コンシューマの役に立つを提供するために、正確な在庫情報を取得する必要があるのです。飲食店に予約システムを導入すれば、コンシューマはその恩恵にあずかることができる。まず店の予約管理を変えなければいけない」

 現在、『ebica予約台帳』を導入している飲食店は約500店舗。それを近い将来、3万店舗まで伸ばしたいと田中氏は語る。

「日本全国に予約業態の飲食店は約10万店舗あります。そこから、家族経営のような小規模店や予約が必要ない店舗を除くと導入対象になる店舗は約5万店舗。つまり過半数以上を目指したい。そのために、どれだけシンプルに使ってもらえるかに力を入れています」

 前述のように複雑なサービスの在庫を間違いなく管理するためには、シンプルなユーザーインターフェースと導入店舗へのサポートは欠かせない。

「そうしないと忙しい店舗では使ってもらえない。まず、使ってもらうことが大事なんです。客単価3万円の店と3000円の店では求めるものが違いますが、その全てに対応できるようにする。システムに人を合わせるのではなく、人・店にシステムを合わせていく必要があるのです。そうして、どんどん使ってもらえれば、いつしか、ebicaがなかったときは、予約管理をどうしていたんだろう?と思ってもらえるようになるはずです」

 例えば、携帯電話がなかった頃、待ちあわせの約束はどうしていただろう? ホテルの予約でも、電話帳で調べて電話をするという方法を取ったのは何年前だろう? 同じように、電話で飲食店に予約を入れるということが、昔話になる日が近い将来やって来る。

「2020年に東京オリンピックがある。海外からのお客さまも増えるでしょう。そのときに電話予約だと言葉の壁がある。ネット予約ならまったく問題がない。いまはまず『ebica予約台帳』を普及させることが一番大事です。その先に、他の業態への応用はあるかもしれません。それから、海外への展開にも力を入れていきたいと思っています」