青森で作られているブランド桃「津軽の桃」/JA津軽みらい、提供
青森で作られているブランド桃「津軽の桃」/JA津軽みらい、提供

 青森県は何の産地? 愛媛県ならば? たいていの人は、それぞれ「リンゴ」「ミカン」と答えるのではないだろうか。それがいずれ、「桃」「アボカド」に変わる日が来るかもしれないという。何が起きているのだろうか。

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 「仲間うちでは近い将来、サクランボが青森県でも作られるようになるんじゃないかと話しています」

 青森県のリンゴ農家の小野友之さんはこう話す。小野さんは、親から農業を継いだ12年ほど前、桃の栽培を始め、現在も手がけている。

「当時、暑い年が続いたせいで、せっかく手間をかけたリンゴが、日光による『日焼け』で変色してしまい、単価が低い加工用に回されるケースが多かったんです。青森では夏場に30度を超える日が多いと、9月に収穫を迎える『わせ種』のリンゴが作りにくくなると言われます。暑い夏が多いせいか、最近は若い世代を中心に桃の栽培を始める農家が増えています」

 桃の栽培は、温暖な気候が適しているとされ、かつては岡山県など西日本が主な産地だった。その後、品種改良や栽培技術が進み、涼しい地域でも育てられるようになった。

 農林水産省によると、2018年の桃の国内生産量のトップは山梨県で、福島、長野と続く。かつては山形だった北限も、秋田や青森へ北上。小野さんら青森県南部の平川市や黒石市で桃を作る農家は約160戸に上り、「津軽の桃」のブランドで関東や九州にも出荷されている。

 農研機構園地環境ユニット長の杉浦俊彦さんは「国内の果物栽培は、気候変動の影響を受けている」と指摘する。

「果樹は実がなるまで時間がかかり、一気に産地が塗り替わるようなことはありませんが、猛暑や残暑の厳しい年が増え、今まで作られてこなかったものが栽培されたり、逆に作れていたものが作りにくくなったりしています」

 愛媛県のミカン農家がオレンジを作るようになったのは十数年前。暑くなると色がつきにくくなったり、外の皮と実が離れてしまう「浮き皮」という現象が起こりやすくなったりする。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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南国のフルーツ「マンゴー」が茨城でも