国会議員は仕事してるの? 72人もいる「トリプルゼロ」とは

週刊朝日

注目度の高い小泉進次郎衆院議員 (c)朝日新聞社

 臨時国会が始まり審議がテレビ中継された。外国人労働者の受け入れなど課題は山積みだが、論戦はぱっとしない。そもそも国会議員は仕事をしているのか。質問などをしていない“ざんねん”な国会議員はその数72人。先生方には言い分もあるようだが、有権者はどう受け止めるのか。

【質問0、議員立法0、質問主意書0…トリプルゼロ議員72人の全リストはこちら】

 国会議員の仕事はたくさんあるが、予算や法律案を審議し、政府の問題点をチェックするのが大きな役目だ。独自に議員を評価しているNPO法人「万年野党」(宮内義彦理事長)の協力で、前の通常国会(1~7月)における次の3項目の回数を整理した。

 一つ目は「質問」。「法律案の審議の主な流れ」を見てもわかるように、国会では委員会や本会議で質問をすることができる。二つ目は「議員立法」。法案の多くは政府(内閣)が提出するが、議員もできる。提出には衆院は20人以上、参院は10人以上の賛成が必要だ(予算関連法案の場合は衆院50人以上、参院20人以上)。三つ目は「質問主意書」。なじみの薄い言葉だが、国政調査権の重要な手段だ。

 この三つの回数がいずれもゼロという「トリプルゼロ」の議員が衆参合わせて72人もいた。この人数は政府側の大臣や副大臣、委員会を運営する常任・特別委員長、国会対策委員長らは除いたものだ。

 与党の自民党が9割近くを占め、石破茂らベテランから小泉進次郎ら若手まで幅広い。野党では小沢一郎や細野豪志らがいる。

 トリプルゼロが続いている回数も調べた。万年野党は2013年から集計しており、9回連続が最多となる。トリプルゼロが続いている議員も目立つ。

 ちなみに、前国会における議員1人あたりの最多の質問回数は55、議員立法は23、質問主意書は117だった。回数は議員によって差が大きい。

 万年野党の理事で経済ジャーナリストの磯山友幸氏は、3項目で評価する狙いをこう説明する。

「これまで議員の活動を評価する指標は少なく、有権者にとって仕事ぶりが見えてこなかった。質問や議員立法などを数量化することで、それがわかるようにした。有権者一人ひとりが考えるきっかけにしてほしい」


 もちろん議員の仕事は、3項目の回数だけでは分析できない。党内や国会外の活動もあり、目立ちにくい調整役にまわる人もいる。それでも、一票を投じた有権者にとって、トリプルゼロの議員の仕事ぶりがわかりにくいのは事実だ。

 編集部では議員側に見解を文書でたずねた。アンケートに応じなかった議員らを除き、36人から回答があった。

 与党議員の主な言い分としては、法律案が国会に提出される前に与党内で十分に審査しているので、質問しなくても大丈夫だというものだ。

 これに対し、磯山氏は「国会の機能が形骸化している」と指摘する。与党内の事前審査は基本的には非公開で、誰がどのような質問をしたのか、有権者にはわからない。

「与党議員の質問回数が少ないのは、国会軽視の姿勢があると言われても仕方がない。党内で激しい議論があったからといって、国会で静かにしているというのでは、有権者が納得できるとは思えません」(磯山氏)

 質問時間が慣例的に野党に手厚く配分されているという説明もあった。確かに国会では慣例上、野党の時間枠が配慮されている。自民党も時間確保のため、「自分たちの質問する機会が少ない」と主張。与党2対野党8だった質問時間が、与党3対野党7に見直された経緯がある。

 磯山氏は、「与党も質問主意書を使えばいい」と提案する。国会で質問するのと同じように、法律案や政府(内閣)の問題点を文書でただすことができるためだ。

 質問主意書について与党議員は、「提出することは控えるように党から指導されている」としている。内閣に対し質問や意見がある場合には直接伝えることができるので必要ないとの立場だが、磯山氏は矛盾を指摘する。

「政府与党は一体で直接意見が言えるから十分だという論理だと、国会で質問する必要もなくなる。本当に質問がしたいのであれば、質問主意書を使うべきで、これは議員が持つ権利であり、党が制約するのはおかしい。制約を見直したほうがいいのではないでしょうか」

 当選回数の多いベテランからは、若手に質問の機会を譲っているという回答も相次いだ。ベテランになるほど調整や運営役を担うため、発言が控えめになるというのだ。

「自分の選挙区の有権者に『質問は若い人に譲っている』などと説明したら、『じゃあ若い人に投票します』と言われてしまうのではないでしょうか。長くそうやってきたので問題だとは感じていないのかもしれないが、議員のあり方として本当にそれでいいのか。ベテランだからこそ、自分の経験を生かして質問するべきでしょう」(磯山氏)

 議員立法にも制度的な問題がある。

 先の通常国会において衆院に出された議員立法では、発議者として名を連ねた自民党議員は10人、それに対し野党は67人。議員立法に詳しい同志社大学の武蔵勝宏教授は、「内閣の提出法律案を優先している背景がある」という。

 自民党議員が議員立法を出す場合、内閣提出法律案の審議に影響しないよう、確実に採択される見通しがあるものに限られがちだ。議員立法をする際には党の事前審査を受けた上で、承認されなければならないという慣例もある。

 議員立法を活用すれば政府が対応しにくい課題に超党派で取り組むこともできるが、それを阻害するような仕組みがあるのだ。武蔵教授はこう語る。

「国会で多数を占める党が内閣をつくる『議院内閣制』のもとでは与党が政府案を通すのは当然だという面もある。だが、議員による立法を軽視していいという話ではない。利益誘導法案が中心だったという問題はあったが、田中角栄は議員立法に積極的に取り組んだ。彼のような人がいまこそ求められているが、政府のほうを向いている人が多く、現状を変える動きは出てこない。議員立法をしやすい仕組みを各党は整備するべきです」

“密室”である与党の事前審査が重視され、議員立法は軽視されがち。議員が政府のほうばかり向いていては、政治不信は高まる。長年の慣例も、時代にそぐわなければ変えていけばいい。仕事ぶりが伝わらないというなら、議員自ら情報をもっと公開するべきだろう。“ざんねん”だと感じているのは議員ではなく、有権者一人ひとりだ。(文中敬称略)

(本誌・吉崎洋夫、亀井洋志)

※週刊朝日  2018年11月23日号

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