津田大介「責任逃れができなくなった『まとめサイト』」

週刊朝日
 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。「まとめサイト」の新たな司法判断について解説する。

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 ネット上の表現の自由を巡る問題で大きな転換点となり得る判決が11月16日、大阪地裁であった。「まとめサイト」の大手「保守速報」の管理人に200万円の損害賠償を命じたのだ。

 まとめサイトとは、2006年ごろから日本で普及したブログの一形態。2ちゃんねるやツイッターなどに書き込まれた情報を、意図を持って編集・転載し、記事の体裁にまとめるのが特徴だ。口語的なやり取りが多いため、新聞や雑誌の記事よりも親しみやすく、若者を中心にこのスタイルが広まっている。

 無数に存在するまとめサイトの中でも保守速報は、日本や自民党を賛美し、中国や韓国、民進党、リベラル勢力などはバッシング対象として先鋭化している。安倍首相が自らの公式フェイスブックで同サイトの記事をシェアしたことでも話題を集めた。

 今回の裁判は同サイトから1年以上にわたって執拗(しつよう)に攻撃を受けた在日コリアンのフリーライターが原告となった。記事によって名誉毀損(きそん)、侮辱、人種差別、女性差別、いじめ、脅迫、業務妨害という7点で侵害があると主張。判決では同サイトの記事が名誉毀損、侮辱、人種差別、女性差別に当たることを認めた。

 判決における一つ目のポイントは「インターネット上の言論であっても、社会通念上限度を超えた表現であれば人格権侵害が認められる」ということだ。

 被告は「インターネット上の表現は、従来型のメディア上の表現と比較すると、誰もがその発信主体となり得るため、一般の読者には信頼性の低い情報と受け取られるし、これにより一定程度名誉が毀損されても、被害者はインターネット上の反論によりその回復を図ることが可能である」と主張していたが、判決では明確に否定された。

 もう一つの大きなポイントは、まとめサイトという形式について法的責任を認めたことだ。

 判決では「本件各ブログ記事は、引用元の投稿を閲覧する場合と比較すると、記載内容を容易に、かつ効果的に把握することができるようになったと言うべきである」と、まとめという編集転載行為に明確な責任を認めている。

 今までこうしたサイトを運営する側は「信頼性の怪しいネットの書き込みだから」「情報をまとめただけだから」といった論理で編集責任を逃れてきた。そうした言い訳が司法の場で明確に否定された。

 まとめサイトといえば、11月13日に放送されたNHKの「クローズアップ現代+」で大手まとめサイト「オレ的ゲーム速報@刃」の月間広告収入が700万円にも及ぶことが明かされ、話題を集めた。情報をゆがめてあおり、特定の勢力を攻撃するまとめサイトがなくならないのは、ひとえにリスクとコストがかからない「おいしい商売」だからなのだ。

 その意味で名誉毀損、侮辱罪を巡る民事訴訟で最高額に近い200万円という金額が認定された今回の判決には大きな意味がある。責任が明確化したことで今後はこうしたまとめサイトに対する訴訟も増えていくはずだ。

※週刊朝日 2017年12月15日号
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