作家・佐藤優「驕るな安倍政権 立憲民主党も疑わしい左派いる」

週刊朝日
 血税635億円もかけた衆院選は自民党が283議席(追加公認含む)と大勝、公明党とあわせて全議席の3分の2を上回る勢力となり、憲法改正の発議が可能となった与党。作家の佐藤優氏は、安倍圧勝の中でも一部では「民主主義」は機能していたと分析する。

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 安倍首相が秋葉原でリベンジ街頭演説し、大勝利とは漫画みたいですね。でも、自民党が勝っても僕は心配することはないと思っています。安倍首相が憲法改正を進めようとすれば、いずれまた総選挙をやらざるを得なくなる。そもそも民意と極度に乖離した選挙結果は、有効性を持ちえない。それなのに何でもありになっている。

 例えば、30センチの物差しがあるとしましょう。今回の選挙で自民党、希望、維新など多くの政党が右側約5センチに入っている。左側の約5センチには共産党。立憲民主党も左とみられているが、僕からみれば、右から10センチぐらい。所属議員らの安保法制、沖縄・辺野古問題の発言をみると疑わしい部分がある。ど真ん中に位置するのは公明党かな。民意というのは両端の5センチにはなく、真ん中辺りにある。右端にいる政治家たちが憲法改正の発議をしても、国民投票にかければ、負ける可能性が高い。公明党の山口代表は「改憲を急ぐ必要はない」と記者会見などで釘を刺していたので、改憲しようとすれば、必ず政局になる。安倍晋三首相はポピュリズムの人だから本当にやり通せるのか、疑問です。今回の選挙で自民党が選ばれたからといっても消極的選択でしかない。もうすぐ森友事件の裁判も始まるので、財務省、安倍昭恵氏の関与が再び、蒸し返されてすぐに支持率は落ちるでしょう。改憲で党内政局になれば、いずれ、持たなくなるのではないか。

 世界を見渡すと独裁の傾向が強まり、民主主義の力が弱まっている。米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席も後継者を決めず、自身の権力基盤を固めている。日本でも安倍首相や小池氏百合氏の言動、民進と希望の合流の決め方(両院議員総会で代表一任にした)をみても独裁の傾向が強まっているようにみえるので注意が必要です。ただ、小池氏は「排除」発言で化けの皮がはがれ、民意からソッポを向かれた。中長期的な視点でみれば、彼女の本質がみえたことは有意義でした。

 今回の選挙で北海道、新潟、沖縄などで一部の地域では民主主義が機能していることがわかり、安堵しました。沖縄は面白い土地で沖縄の公明党は本土と違い、辺野古移転反対なのです。沖縄(米軍基地問題)、北海道(TPPなど)、新潟(原発)など厳しい問題に直面する地域は、政治と密着せざるを得ないので、住民らは自分の頭で考え、よりマシな政党を選ぶ。今後、選挙を重ね、国民の生活に直結するような問題が起きれば、自民党への白紙委任もなくなるのでは?今回の選挙で、安倍首相が信任されたワケじゃない。驕るなと言いたいですね。(構成/本誌・森下香枝)

※週刊朝日 2017年11月3日号より加筆
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