「声」がどれだけ人の世を動かしているか、多くの人は自覚がないのではないか。見た目、しぐさ、表情……これら非言語コミュニケーションの偉大な力を説いてきた『人は見た目が9割』の著者・竹内一郎さんの総括は、ずばり、<声>! 最新刊『人生は「声」で決まる』(朝日新書)で説く「声こそ最強の教養である」、その真相とは?
■声への気づきは自分への気づき
声とは、人生をよりよくするために、思い通りに活用できるツールである。
いくらインターネット社会が進んでも、人と人が面と向かって話さなくなる時代は決して来ない。商談などでも、最後の決め手はかならず話し言葉になる。
その際、声とは言葉の乗り物である。自分の気持ちが届いているか。相手の心に響いているか。そんな声を自分が出せているか――。ちょっと気にするだけで、結果はずいぶん変わる。
何も美声である必要はない。歌手になるわけではないのだから。声を商売道具にしている役者や芸人も、美声の人ばかりではない。むしろ、悪声の人もいる。声には「正解」がないのだから、自分の武器として、「どう使うか」をとことん考えればよいのである。すなわち一人一流、「声は人なり」、「声は生き方なり」なのである。
声の威力を、例を挙げて紹介しよう。
『ジャパネットたかた』の高田明(前)社長の声が、あれほど押し出しが強くて、聞く人の心を興奮させなかったら、九州・佐世保という地方にある同社はテレビ通販ナンバーワンの会社になり得ただろうか。
テレビドラマ『鬼平犯科帳』の主人公、長谷川平蔵役を中村吉右衛門さん以外の人が演じていたら、これほどまでに成功していただろうか。
アラン・ドロンの吹き替えが野沢那智でなかったら、アラン・ドロンは今でも日本で「二枚目俳優」の代名詞となっていたろうか。
『ドラえもん』の声が、大山のぶ代でなければ、これほどの国民的人気キャラクターに化けていたろうか。
『オフコース』の小田和正の声は、曇りのない透明感のある声で、その音楽世界を支えているのではあるまいか。
有名人の例を挙げすぎたかもしれない。
しかし、学校や会社の周囲を見渡しても、仕事のできる人、人間関係を円滑に進めている人に、声のよい人が多いことに気づくはずである。