40代男性カップルの日常描いた『何食べ』 ドラマ化で“深夜枠”がピッタリの理由は…

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ドラマ
弁護士の史朗役を西島秀俊(右)が、美容師の賢二役を内野聖陽が演じる (c)「きのう何食べた?」製作委員会
くらもち・ふさこ/1955年、東京都出身。72年デビュー。2017年、『花に染む』で手塚治虫文化賞「マンガ大賞」。「ココハナ」(集英社)で「とことこクエスト」を連載中 (c)くらもちふさこ/集英社
よしなが・ふみ/1971年、東京都出身。94年デビュー。2009年、『大奥』で手塚治虫文化賞「マンガ大賞」など受賞。「メロディ」(白泉社)に『大奥』を連載中 (c)よしながふみ/講談社

 漫画家デビュー47年目を迎えたくらもちふさこさんと、4月から原作ドラマがスタートするよしながふみさん。親交ある二人の人気漫画家が、互いの作品のこと、母との関係、少女漫画について語り合った。

【画像】くらもちふさこさんとよしながふみさんの漫画作品がこちら

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──よしながさんが週刊「モーニング」に連載している『きのう何食べた?』が、4月からドラマ化されます。弁護士と美容師という40代の男性カップルの日常と日々の食事が丁寧に描かれた作品です。

くらもちふさこ:私も楽しみなんですが、実写化のポイントはどんなところでしたか。

よしながふみ:『何食べ』は、ストーリーの強度が弱いんですよね。二人の話が軸ですが、同じくらい食べ物について描いているので、無理なくドラマにするならば30分枠だろうな、と考えていました。実はほかからも企画はあったんですが、食べ物や料理の話を入れられないと言われまして。そこを省いてゲイのカップルの問題を社会派的に取り上げるのも違うな、と。

くらもち:じゃあ深夜枠に決まったのはバッチリでしたね。

よしなが:狙ったわけではないですが、「孤独のグルメ」の枠なんです(笑)。ドラマはたくさんのスタッフが関わって作りあげるので、たとえば小道具などは私よりはるかに多くのことを考えて用意してくださって、ありがたいなと思っています。

くらもち:原作は青年誌での連載なので、さまざまな作品のなかに載っているのがいいですね。

よしなが:連載を始めたら、予想以上の反響で、ゲイの専門誌の編集長からも激励をいただき、背筋が伸びました。最初はBL誌で連載するつもりだったんですが、主人公が40代だと難しいと言われたんです。

──くらもちさんも『天然コケッコー』が映画化されていますし、昨年はNHKの朝ドラ「半分、青い。」で『いつもポケットにショパン』や『A−Girl』などさまざまな作品が使われたことが話題になりました。

くらもち:「半分、青い。」は、私の作品が出たんですが、ストレートにドラマ化されたのとも違うので、嬉しいんですけれど、気持ちの置き場がない感じでもあって。でも、母や親戚も喜んでくれて良かったです。

よしなが:作者の役を演じた豊川悦司さんは、もともとくらもちさんの作品を読んでいたんですよね。

くらもち:お姉さんの影響で読んでいらしたとか。当時の別冊マーガレットには、『伊賀野カバ丸』とか男性が読んでも面白い作品がありましたし。

よしなが:くらもち漫画を読んでいたとわかって、私の中のトヨエツさんの株が高騰してしまいました(笑)。

──くらもちさんは2月末、初の語りおろしエッセー『くらもち花伝 メガネさんのひとりごと』が出版されたところです。

よしなが:拝読しましたが、とても具体的で、これから漫画を描こうという人に向けて書かれていると思いました。作品を描くためには自分の心をかきたてる種火が必要で、ときめきを種火にしてこられたことや、しぐさでキャラクターを表現するといったこととか。

くらもち:デビュー45周年を機にまとめることになり、どんなふうに漫画を描いてきたのか、できるだけ率直に言葉にしてみたつもりです。でも、言葉にするのは大変でした……。

よしなが:驚いたのは、精神的に大変だった時期にも、くらもちさんが描き続けていらしたことです。

くらもち:ありがたいことに、私の場合は編集部が温かく見守ってくれて。ずっと同じ別冊マーガレットで描き続けていたこともあって、みなさんに助けていただきました。

よしなが:くらもちさんがすごいな、と思うのは、いつも「今の絵」をお描きになっていることです。別マでお描きになっていた頃は、男の子の目はタレ目でした。そこから少しずつ、変わっていって、2016年に連載を終えた『花に染む』では、つり目になっている。マイナーチェンジを続けてこられたんですね。

くらもち:絵柄が変わらない方もおられますが、私はいろいろ試したくなるんです。よしながさんは作品のスタートからキャラクターが完成されていますね。いわゆる「キャラが立っている」。私は連載1回目ではそこに行き着けないことが多くて、昔、「最終回でやっと、読者アンケートでいい結果をとるんだよね」と言われたこともあります。

よしなが:漫画に限らず、登場人物が個性的すぎないほうが純文学に近づくと思うんです。キャラが立っていないほうが、物語に没入できる。逆にキャラが立っていると、その人の動向に読者は一生懸命になります。そういう意味で、くらもちさんの漫画は純文学に近いんじゃないでしょうか。

──音楽高校を舞台にしたくらもちさんの作品『いつもポケットにショパン』は、母と娘の物語でもあると感じています。

くらもち:実際に親子喧嘩したときの気持ちを採り入れて描いてみたりしました。母は強い人なんですが、喧嘩ではすぐに折れる。そこが母親だな、と。よしながさんはいかがですか。

よしなが:両親は当時としては珍しい完全な共働きで、母は教師でしたが、父に家事を必ず半分やらせていました。「ここで譲ってはいけないんだ」と母が思っているのがわかりましたね。母は職場でのお茶くみも拒否した強い人。でも私はそこまで強くなくて、「みんなが自分だけで戦えるわけじゃないんですよ。だから弁護士を目指そうと思います」と、母に言ったことがあります。仕事として、誰かのためならばできることがありますから。まあ、なれなかったんですけど(笑)。

──最後に、あらためて少女漫画とはなんでしょうか。

よしなが:たとえば男女が逆転する世界を描いた『大奥』は、女性を読者として想定し、男性を意識しなくてよい雑誌だから、描けました。少女漫画というジャンルがなかったら、生まれなかった作品です。

くらもち:少女漫画は時代によって様々なジャンル、作品が生まれるので、一くくりにするのが難しい。けれど、それは少女漫画がつねに変化、成長し続けているからで、可能性の証しであるように私は感じます。

(構成/ライター・矢内裕子)

AERA 2019年4月8日号