「漫画の読み方がわからない人もいる」こうの史代さんが語る“漫符事典”の必要性

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『ギガタウン』に登場する動物たちは、ペンでなく毛筆で描かれている。本家「鳥獣人物戯画」を思わせる、柔らかで自在な描線が魅力だ(撮影/片山菜緒子)
漫画家 こうの史代さん(49)/1968年広島市生まれ。95年『街角花だより』でデビュー。2004年発表の『夕凪の街 桜の国』は07年に映画化。他に『日の鳥』など著書多数(撮影/片山菜緒子)

 音符やハートマークなど漫画で欠かせない表現記号である「漫符」。その用例を1記号ごとに説明を加えて4コマ漫画にまとめた事典『ギガタウン』が1月19日に発売された。作者はアニメーション映画「この世界の片隅に」の原作者、こうの史代さんだ。作品に込めた願いとは?

【漫画を見る】本邦初の”漫符事典”『ギガタウン 漫符図譜』を特別に一部公開!

「よく『漫画は子どもでも読める』と、理解しやすいものの代名詞のように言われます。けれど、漫画を読めない(読み方がわからない)という人もいますよね。

 なぜか私の周りには、昔から漫画がすごく好きな人と、まったく読めない人が集まっているんです(笑)。読めない人が『自分も読みたい』と思った時に、読み方を学べないのは気の毒じゃないですか」

 本のあとがきにも登場する、こうのさんのお母さんも、漫画が読めなかったそう。

「漫画の描き方を教える本はたくさんあるのに、漫画を読むための技術を教える本はないんですよね。一定数いる、読み方がわからない人たちは置き去りです。実は漫画のコマ割りには、約束事がいろいろあって、右から左、上から下に、目線が流れるように構成されています。場面転換、時間の流れもコマ割りで表現する。読める人にとってはあたりまえの約束事ですが、漫画を読むには、それなりの技術が必要なんです」

 では、その「漫画を読む技術」をどうやって伝えればよいのか。ヒントは海外での漫画の紹介方法にある。

 こうのさんの作品は海外でも多数、翻訳出版されている。最近はアルファベットの本(左開き)とは逆に、日本語版のまま(右開き)で出版されることがほとんどだ(以前は逆版で印刷し、左開きで製本していた)。欧米の読者は、通常の母国語の本とは逆の開き方で、日本の漫画を読むことになる。

「外国語版の本には、最初か最後のページに、どんな順番でコマを読んだらいいのか、矢印が入った説明が載っています。そのページを読めば、初めての人でも理解できるようになっている。漫画が読めない人もいるのだから、日本でもすべてのコミックスのどこかに『漫画の読み方』を載せればいいのにと思います」

 日本で発達してきた漫画の世界。その魅力を広めていくためにも、『ギガタウン 漫符図譜』でまとめられた漫符は大きな手がかりになりそうだ。(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年2月19日号より抜粋