2つめの理由は、観点ごとの評価をよく見るようになるからです。子どもも保護者も評定があると、(3段階評定の場合)「3が〇個」と数えがちになります。でも、評定がないと、観点ごとの評価を見るようになります。

 そして次に、観点ごとの評定で「Aが〇個」と数えます。安易なのは変わりませんが、「3が〇個」より「Aが〇個」で数えるほうが、数が増えるので、嬉しさも増えます。3の評定が全くない子どもも、Aの評価はどこかの教科でつくかと思います。勉強が苦手な子どもにとって、評定がない形式の通知表が一番、落ち込まないのです。

 通知表の形式は、学校ごとに決められます。出さない学校もあります。子どもにとって、親御さんにとって、教師にとって、どのような通知表のカタチがいいか常に考え、検討し、改善し続けることが大切だと思います。

(文/松下隼司)

通知表を渡すときに、現役小学校教師が子どもに伝えていることとは?「頑張りは、数字だけでは表せない」
著者 開く閉じる
松下隼司
松下隼司

1978年生まれ。奈良教育大学卒業。大阪の公立小学校に勤める現役教師。2児の父親。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。令和6年版教科書編集委員を務める。著書に絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)、『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(フォーラムA企画)などがある。教師向けの情報サイト「みんなの教育技術」で連載を持つほか、Voicy「しくじり先生の『今日の失敗』」でパーソナリティーを務める。

1 2 3