そしてプロジェクトの1カ月半後。彼女からメールが届きました。
「彩智さん、子どもの成績が2人いっぺんに上がったんです!」

 詳しく聞くと、5年生春の塾のクラス替えで一つクラスが下がってから、長男は成績不振が続いていたそうです。先生に相談すると、12月までに成績が戻らなかったら志望校を変えてもらうと言われてしまいました。

 長男には持病があって、それが原因で勉強に集中できないこともあました。女性は息子の病気の根治のため12月に手術の手はずを整えつつ、きっとそれまでは勉強に集中できないだろうと思っていたんだそうです。でも予想は見事に外れました。11月のクラス替えで、長男は上のクラスに返り咲きました。しかも塾内で3位だったのです。

 5月のテストでは、算数の偏差値は36.9、理科は35.4。ところが11月になると算数の偏差値62.7、理科は偏差値64.9の快挙。算数は1位です。長男だけではありません。マイペースな次男はこれまで、下克上の激しい塾で成績が振るいませんでしたが、初めてクラスで1位になり、一つ上のクラスに昇格しました。成績のグラフは見事な右肩上がり!


 成績を見た夫は、「塾に同じ名前の子がいるんじゃないよね?」と信じられない様子。長男は「俺の昇格がかき消されるくらいのミラクルだ」とさらに驚いていたそうです。2人同時に成績アップなんて誰もが予想していませんでした。

 彼女は2人に「なぜ成績が上がったと思う?」と聞きました。返ってきたのは3つの答え。

 一つ目は、「苦手な片づけに逃げずに取り組むママの姿を見て、2人で頑張ろうって話し合ったんだ」。兄弟は以前から、ママに友だちを家に呼びたいとお願いしていました。その度に部屋が片づいたらね……と先延ばしにされていたのだけど、ママはその願いを叶えてくれた。だから僕たちも負けていられない、と2人で頑張ったんです。

 二つ目は、「部屋が片づいて集中できた」。前は机の上にいろんなものがあって、何かを始めるにも探し物からだったけど、今はどこに何があるのかすぐにわかるし、集中できると言うのです。

 三つ目は、「ママがガミガミ言わなくなって穏やかでいられた」。女性は片づけに没頭する間、子どもたちに注目しすぎなくなっていました。小言を言わなくなって、これまでは2人が安心できる環境を与えることができていなかったことに気づいたと言います。部屋が片づいて、彼女自身がイライラしなくなった影響もあったでしょう。

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家族に生まれたチームワーク