「瀬戸内海がゴミ箱になる日」から(提供/南海放送)
「瀬戸内海がゴミ箱になる日」から(提供/南海放送)

 瀬戸内海という広大なエリアで「ゴミ拾い」を続ける60歳の男性がいる。

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 自称、「かっこいいクソじじい」。

 白髪を長く伸ばし一本に縛ってヘルメット姿で行動する。プラスチックゴミが集まる海辺を船でパトロールして発泡スチロールなどのプラスチックを回収しゴミ処理場などに運ぶ。プラスチックゴミは、波に砕かれてマイクロプラスチックとなって生き物を脅かす。拾っても拾っても増え続け、海の底や沿岸にたまり続ける。圧倒的なゴミの量に対し、活動は手作業だ。無謀な闘いに挑む現代版のドン・キホーテにも見える。

 そんなスケールの大きいボランティア活動が8月22日深夜の日本テレビ系「NNNドキュメント」で紹介された。

 南海放送が制作した「瀬戸内海がゴミ箱になる日」。

 主人公は岩田功次さん(60)。愛媛県八幡浜市に住み、若い頃から鳥や動物の保護活動に従事。今はモーターボートを操ってプラスチックゴミが集まっている浜辺を駆け回る。

「誰も知らないような船でしか行けないような場所には、実はたくさんのゴミが集まっている……」

 岩田さんの本業はサインデザイナーだ。表示板やピクトグラムを設計・施工する仕事だが、5年前から船でゴミ拾いを行っている。活動範囲は瀬戸内海全域だ。

「この場所も去年トラック10台分のゴミを拾った際のゴミ浜の一つ。7カ所拾った(ゴミ浜)の1か所…」

 口から飛び出すのは、どれだけの量のゴミを拾ったのかというエピソード。

 発泡スチロールを抱えて語ったのは「大きい発泡スチロールは大網で7杯8杯拾っている」。大網で何杯かがこの人のゴミ集めの単位だとわかる。

 プラスチックゴミは分解するのに400年以上。2050年には海中のプラスチックの量が魚の上回るという予測がある。そんな情報をナレーションが伝える――。

「放射線を浴びたX年後」のディレクターが担当

 番組を制作したのは南海放送の伊東英朗ディレクターだ。

 1950年代以降、南太平洋で相次いで行われた米英などの核実験によって高知県などから操業に出ていたマグロ漁船の乗組員が死の灰を浴びて健康被害に苦しんだ事実を「放射線を浴びたX年後」で放送。続編を次々作って映画公開するなど核兵器による環境汚染に警鐘を鳴らしている。今年3月には芸術選奨文部科学大臣賞も受賞した。

 長編を世に送り出してきた伊東氏にとって実質30分に満たない短編の番組だが、これまで作った中でも一番といえる反響があったという。

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