――哺乳瓶でミルクをあげるシーンでは、「赤ちゃんにギャン泣きされた」という。

 すごくショックでした。結局、その日の撮影は終了になったんです。撮り直しの時は、赤ちゃんのお母さんに哺乳瓶を口に入れてもらって、僕がそっと手を添えてお母さんと入れ替わりました。ぎりぎり泣かないところまで撮れたのでよかったです。赤ちゃん相手では演技プランも何もありません。本当に「生」って感じですね(笑)。

――赤ちゃんとの撮影は4日間にまとめて行われた。撮影自体が子育てに追われる生活そのもののようだったという。

 コロナ禍で何度も撮影まで来ていただくわけにもいかないので、赤ちゃんが一堂に集まりました。不思議なもので1人が泣くと連鎖するんですよね。あれは何なのですかね? 赤ちゃんが寝るのを待つこともありました。その間「休憩入れましょう」となったので、みんな食事をし始めたんですが、「寝ました~!」と。その声にみんな慌てて、食事を置いて現場に戻りました。実際の育児もこんな感じで忙しいんだろうなと感じました。

■子育ては1人ではなく

――本作に出たことで、瀬戸さん自身は育休を取ろうという気持ちになったのだろうか。

 役者は特殊じゃないですか(笑)。代わりが利かないので、育休を取るのは覚悟が少し必要かなと思います。ただ、たとえ育休が取れなかったとしても子育てには100%関わりたい。育児はどれも大変です。全部思い通りにいきませんから。

――10%にも満たない日本の男性の育休取得率をもっと上げるためには何ができるのだろうか。

 制度については、僕が気軽に言うことはできませんが、「子育ては1人ではできないんだ」ということをもっとみんながわかればいいのではないでしょうか。そのためにはこういう作品が放送され、記事に書いていただいて、多くの人に知っていただくしかない。だから、僕も演じて感じたことを、きちんと自分の言葉で伝えたいなと思っているのです。(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2021年7月19日号