【ヤマザキマリ×八幡湯】古代バラネイオンの湯/男湯(左)と女湯(右)の壁にプロジェクターで下絵を投影しながら、普通の倍の2日をかけて制作された。右の手ぬぐいは、ヤマザキさんのデザイン。都内のすべての銭湯で展開されるスタンプラリーでもらえる(撮影/写真部・高橋奈緒)
【ヤマザキマリ×八幡湯】古代バラネイオンの湯/男湯(左)と女湯(右)の壁にプロジェクターで下絵を投影しながら、普通の倍の2日をかけて制作された。右の手ぬぐいは、ヤマザキさんのデザイン。都内のすべての銭湯で展開されるスタンプラリーでもらえる(撮影/写真部・高橋奈緒)

 都内の四つの銭湯では、湯船につかりながらアートが楽しめるという。そのうちの一つの銭湯では、壁面にギリシャの共同浴場やプロジェクションマッピングが出現。有名アーティストたちの作品を見ながらゆったりできる仕掛けだ。AERA 2021年7月12日号では、9月5日まで開催されている「東京銭湯フェスティバル2020」の関係者らを取材した。

【写真】プロジェクションマッピングでペンキ絵がつぎつぎ変化する銭湯アートはこちら

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 会場となったのは、都内で営業する四つの銭湯。それも、今どきのオシャレ銭湯ばかりではない。なかには江戸時代から営業する「金春湯」(東京都中央区)などの大御所銭湯も会場になった。アートと銭湯がコラボする「東京銭湯フェスティバル2020」だ。

 さまざまなジャンルの4組のアーティストが会場の銭湯でメインのキャンバスにしたのは、よく富士山のペンキ絵が描かれている壁面の部分。熱めの湯船にそろそろとつかり、「あー」とも「がー」ともつかないようなうなり声を上げながら眺めるのがお約束の、あそこだ。

 数年で描き替える必要があるという刹那のアート、ペンキ絵を白いキャンバスに塗り替え、アーティストたちが思い思いの作品を描いた。

■ペンキ絵が動き出す

 そもそも20年に開催予定だった東京五輪・パラリンピックめがけて東京都などが文化イベントを募集。2400件以上の応募の中から選ばれた13イベントのひとつだったが、大会の延期にともなって、1年遅れて5月末から営業中の四つの銭湯で作品が紹介されている。

 出かけるときはリュックに必ずお風呂セットを忍ばせるようにして、四つの銭湯を訪ねてみた。電車の中でハンカチで汗を拭おうとして、着替えのパンツを取り出しそうになるトラブルはあったが、数日で4軒コンプリートすることができた。

【大原大次郎×金春湯】湯覧線/銀座8丁目で堂々営業するアットホームな老舗銭湯「金春湯」。プロジェクションマッピングでペンキ絵がつぎつぎ変化(写真:TOKYO SENTO Festival 2020提供)
【大原大次郎×金春湯】湯覧線/銀座8丁目で堂々営業するアットホームな老舗銭湯「金春湯」。プロジェクションマッピングでペンキ絵がつぎつぎ変化(写真:TOKYO SENTO Festival 2020提供)

 まずは前出の大御所「金春湯」の「湯覧線(ゆうらんせん)」と名付けられた作品だ。グラフィックデザイナーの大原大次郎さん(42)が手がけたこの作品は、今回監修を務めた銭湯絵師の田中みずきさん(38)が描いた富士山などのペンキ絵の上に、何とプロジェクションマッピングによってさまざまな文字や図形が映し出される仕掛け。

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