「いい意味でのチープさが伝わらない」  “東京の舌”に馴染まない和歌山ラーメンがなぜ人気店になったのか? (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「いい意味でのチープさが伝わらない」  “東京の舌”に馴染まない和歌山ラーメンがなぜ人気店になったのか?

連載「ラーメン名店クロニクル」

浅草橋にある「ろく月」の特製豚白湯らぁめん。原価率の高さを乗り切った(筆者撮影)

浅草橋にある「ろく月」の特製豚白湯らぁめん。原価率の高さを乗り切った(筆者撮影)

 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。東京・浅草橋で「豚白湯ラーメン」で行列を作る店主が愛する一杯は、和歌山出身の店主が埼玉で繰り出す、本格派の和歌山ラーメンだった。

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■「床の上にも三年半」 原価率と戦ったラーメン店主の覚悟

 東京都台東区の浅草橋駅から北に徒歩4分、福井町通りを抜けると「麺 ろく月」がある。2013年にオープンした店で、化学調味料を使わずに仕上げた「豚白湯らーめん」が人気だ。コクと旨味の深い豚骨スープは、厚みや粘度はあるがしつこさが全くなく、上品なまとまり。カエシは昆布、アサリ、干しシイタケ、イカに5種類の天日塩を合わせ、3種類の丸大豆しょうゆを加えている。アスパラやオクラ、ヤングコーンなど野菜の彩りが美しい。
「ろく月」の特製豚白湯らぁめんは一杯950円(筆者撮影)

「ろく月」の特製豚白湯らぁめんは一杯950円(筆者撮影)


「麺 ろく月」は、店主の湯田達巳さんが脱サラして、半年間の修行の後に開業した。開店翌年の14年末には、業界最高権威ともいわれる「TRYラーメン大賞」の新人賞(豚骨部門)を受賞したが、原価率が高すぎることから全く利益が生まれず、店で寝泊まりする日々が3年半も続いた。徐々に味をブラッシュアップするとともに、食材を捨てずに有効活用することで原価率を何とか抑え、19年からようやく利益が出るようになった。

「ラーメンのクオリティを落とさないためには、食材費を惜しんではいけないと思っていました。『石の上にも三年』ならぬ『床の上にも三年半』。本当に大変でしたが、何とかしのぐことができました」(湯田さん)
「ろく月」店主の湯田達巳さん。素材へのこだわりは人一倍(筆者撮影)

「ろく月」店主の湯田達巳さん。素材へのこだわりは人一倍(筆者撮影)


 19年末からは麺を自家製にした。借金が終わった段階でチャレンジしようと以前から決めていたのだという。これで念願だった「全てを手作りで仕上げるラーメン」が完成した。

 ようやく理想のラーメンに近づいた矢先、再び売り上げの大打撃が待っていた。新型コロナウイルスである。街に人がいなくなり、時短営業の要請もあったことから、夜の営業が難しくなる。昼のみの営業にすると、月200万円あった売り上げが80万円にまで落ち込んだ。アルバイトにも辞めてもらい、現在も昼のみの営業が続いている。


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