コロナ禍で行われた昨年の就活。パーティション越しに就活生に説明する企業の採用担当者/2020年7月(c)朝日新聞社
コロナ禍で行われた昨年の就活。パーティション越しに就活生に説明する企業の採用担当者/2020年7月(c)朝日新聞社

 法政大キャリアセンター部長の藤野吉成さんはこう説明する。

「ニトリは小売りのイメージがある企業でしたが、今は違います。家具の企画から生産、販売までを担うメーカーとしての印象が強まり、学生たちは自分の意見をフィードバックできるのではという期待を持っています」

 法政大はニトリのほか、キーエンスやファーストリテイリング、楽天などへの就職者数も増加。さらに、大学通信が調査した有名企業400社への実就職者数も、11年からの10年間で1.59倍に増えた。

躍進の裏に緻密な計算

 躍進の裏側には、緻密に計算されたデータ活用がある。藤野さんはこう説明する。

「たとえば、400社に入った学生をみると、座学より少人数でアクティブなセミナーを受講した人が多いことがわかりました。ならばと座学を極力減らし卒業生との接触型イベントを増やすなど調整をしています」

 学生たちの就活の足跡を丁寧に追いかけたからこそ、見えてきたものがある。企業側も、その感度の高さを狙う。

 だが、それだけではない。

 漠然とした質問をする学生が増える秋頃から、よくある質問をワーク型にして様々な講座を毎日開設。すると、ピーク時の個別相談の待ち時間の平均が56分から14分に激減。アドバイザーごとにばらつきが出ないように就活支援のマニュアルも作成した。

 一つひとつ仮説を立てて、効率化と質の向上を意識する一方で、泥臭いサポートも怠らない。

「キャリアセンターの使命は、高い学費を払っている学生にやりたい仕事に就いてもらうこと。19年からは、学生全員に連絡をして就活状況を確認しています。昨年は約2万回かけて、約1200人の学生が『自分では言えなかったけど相談したい』と話してくれました」(藤野さん)

 決して、効率の良いやり方ではない。管理職として実行すべきか悩んだが、職員から上がった「やりたい」の声にかけることにした。結果、1200人のうち65%の学生は就職が決まったという。

幅広い「立地」も強み

 日本一の学生数の多さを誇る日本大も、10年間で伸びている大学の一つだ。400社への伸び率は1.57倍。企業別にみると、建設や鉄道業界で存在感を放っていることがわかる。

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「日大卒すごいな」