Lip Kaminさん作/東京藝術大学デザイン科で学ぶイラストレーター/デザイナー。アパレルとのコラボ、CDジャケットも手がける(写真:ラフロワ提供)
Lip Kaminさん作/東京藝術大学デザイン科で学ぶイラストレーター/デザイナー。アパレルとのコラボ、CDジャケットも手がける(写真:ラフロワ提供)

 アートの世界がデジタル空間で花開いている。そんな作品をリアルで鑑賞する場ができた。AERA 2021年6月28日号では、デジタルアート専門画廊「ラフロワ」の仕掛け人である野呂翔悟さんが日本のデジタルアートの今後の展望について語った。

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「音楽で例えればJポップに準じるような、誰でも手軽に楽しめる日本発の新しいカルチャーをつくりたいと考えています」

 そう話すのは、デジタルアートを発信する「ラフロワ」の野呂翔悟代表(35)。この6月、有楽町マルイ(東京)に専門ギャラリー「DiGARO」を開いた。

 デジタルアートといっても種類はさまざま。イラスト、幾何学模様、コラージュ──。創作方法も多彩で、パソコンやタブレットで描いた作品や、肉筆画をデジタル加工したものもある。

 DiGAROは特にイラスト系を扱う。日本のアーティストは「漫画カルチャー」を踏襲した作風が強みで、海外に発信していく上で評価を得やすい。絵画でいうと「浮世絵」に近いイメージだと、野呂さんは言う。

「浮世絵は陶器の包み紙として使われていたものが、海外で評価されてアートになりました。それと同じようなことが、国内の作品に起きています」

横顔 急行2号さん作/2017年末から活動開始。福岡を中心にイベントや展示会に出品している。柔らかい雰囲気の女性を描くのが得意(写真:ラフロワ提供)
横顔 急行2号さん作/2017年末から活動開始。福岡を中心にイベントや展示会に出品している。柔らかい雰囲気の女性を描くのが得意(写真:ラフロワ提供)

■アジアから熱い視線

 日本では多くのイラストレーターやウェブデザイナーがSNSで作品を発信している。何万ものフォロワーを抱える人も珍しくない。野呂さんは才能豊かなアーティストたちに注目。インスタグラムのアートメディア「KEIVI-軽美術部-」などで3年間に約2千人の作品を紹介してきた。特にアジアの若い世代からの視線が熱いという。

「香港や台湾のフォロワーが急増しています。日本ではまだ、『SNSで発信しているのがアートなの?』っていう感じかもしれませんが、海外ではアーティストとして認知されています。そうした国内外の評価のギャップが、浮世絵がアートとして浸透し始めた時期と似ているように感じています」(野呂さん)

 野呂さんが会ったアーティストは数百人。30歳前後がメイン層だ。独学でスキルを磨いた人もいれば、美大や芸大の現役生や卒業生もいる。美容師や会社で経理をしている人もいた。

「人気なのは浮世絵でいうところの美人画。アニメの美少女をアート寄りに洗練した感じの作品がバズリます」(同)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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