立花隆さん/2006年10月撮影(c)朝日新聞社
立花隆さん/2006年10月撮影(c)朝日新聞社

読書とは、インプットではなく、スループットだ」

【写真】壁がすべて書棚に覆われ…立花隆さんの仕事場「知の要塞」が写ったAERAはこちら

 4月30日に急性冠症候群のため死去していたことがわかったジャーナリストで評論家の立花隆さん(享年80)は、2001年7月9号の「AERA」で自身の読書のあり方をこう語っていた。

 ときの首相の退陣につながった「田中角栄研究」などの調査報道があまりに有名だが、それ以外にも経済や医療や宇宙など、さまざまなテーマで次々とベストセラーを生んだ。

 本を愛し、本に囲まれる生活を送っていた「知の巨人」の読書とは、いったいどのようなものだったのか。当時61歳だった立花さんの読書術を再掲する。

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 立花隆さんが、近著『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』で、速読術を披露した。

「その日、読まねばならない本が5冊あれば、全部を読む。10冊あっても、無理して読む」

 という達人の教えである。

――本当にそんなに読めるの?

 多くのひとが抱いてきたこの疑問に、実践的なテクニックを列挙して答えている。ではまず、そのポイントを見ていこう。

 最初に、立花さんは、速読できる本とできない本を区分けしている。趣味で楽しむ小説などに速読は不要だ。仕事のために、分厚い専門書から必要な情報を取り出さねばならない。そんな場面こそ、速読の出番だという。
 
■パッパッパッのリズム

続いて、こんな手順をあげる。

(1)深く意味がつかめなくても、とにかくサァーッと目を走らせる。
(2)次に、本の頭に戻り、パラグラフ単位にもう少し細かく読む。
(3)流れを把握できたら、あとは気になる箇所に戻りながら、さらに読みを重ねていく。

 これが、立花式だ。大切なのは、その時々で柔軟に、自分で(1)~(3)の配分を決めること。3段階にもこだわらない。

 さらに、そのための具体的な読み方も示した。次の手法は、試した読者も多いはずだ。立花式の真骨頂ともいえそうな部分である。

「パラグラフ単位に、頭の文章だけ読んでいく。続き具合がわからなくても、ワンセンテンスでやめて、次のパラグラフに飛ぶ。全ページをとにかくめくってしまう」

 こうなれば、自分の目で立花さんの読書を見たい。そこで、東京・小石川の仕事場を訪ねた。地下2階から地上3階まで、壁がすべて書棚で覆われた「知の要塞」だ。

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超速読に必要な準備…