イラスト/小迎裕美子(AERA6月21日号)
イラスト/小迎裕美子(AERA6月21日号)

「3年前、遠距離の彼氏とLINE電話をしてました。ベッドに横になってしゃべっていると、一緒に寝ているみたいでした」(宇都宮市・29歳女性)

結婚前、彼と同居するイメージが持てなくて、Zoomでつながりました。いつもリビングにバーチャルの彼がいる感じでした。2週間すると、彼といることに徐々に慣れていきました」(京都府・30歳女性)

■コロナの孤独を癒やす

 コロナ禍でつなぎっぱなしが加速した。冒頭の九州の女性が使う無料音声通話アプリ「パラレル」は、オンラインゲームをしたり、画面共有して動画を見たりできる。コロナ禍の昨年4月、月に100時間以上通話する人が2倍に増加した。運営会社の青木穣共同創業者はこう話す。

「1日で21時間以上通話する方もいて、常に接続したまま生活する新たなつながり方が生まれつつあります。オンラインでつながりっぱなしの状態が、コロナ禍の孤独を癒やしてくれているようです」

 茨城県の30代の男性会社員は、付き合っている30代の女性とパラレルで1日20時間以上通話している。無言の時間が愛を育てる。ある休日、男性はスマホに向かって話しかけた。

「おはよう」
「ぐー」

 女性からいびきで返事があった。スマホの通話は昨夜からつなぎっぱなし。そのうち、寝起きの声が聞こえた。遠くでガンと物が動くような音がして「痛っ」という声がした。

「ああ、起きたな、ぶつけたな、と常に彼女の存在を感じています」(男性)

 通話しながら、二人でショッピングもする。アプリでスマホの画面共有をして、ファッションのECサイトを一緒に見る。「この服かわいくない?」とカートボタンをポチリ。買い物のあとはどちらともなく無言になり、好きなことを始める。意外な発見があるという。

 電話口から「ガタガタ」と機械音がした。男性が「どうしたの」と聞くと、「服を直すのにミシンを使ってた」と彼女。「意外と器用なんだね」と感心した。彼女も驚いたことがある。「いま何してるの?」と言ったとき、彼から「三つ又コンセントを分解してる」と聞いて、「趣味でそんなこともできるんだ」と思った。デートではうかがえなかった一面が見えてくる。(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年6月21日号より抜粋