マスクを着けて通勤する人たち。周囲の目もあり、息苦しさや頭痛を感じても簡単には外せない/5月10日、名古屋市で(c)朝日新聞社
マスクを着けて通勤する人たち。周囲の目もあり、息苦しさや頭痛を感じても簡単には外せない/5月10日、名古屋市で(c)朝日新聞社

 コロナ禍で常時着用しているマスクだが、運動時には注意が必要だ。AERA 2021年6月14日号は、その危険性を解説する。

【イラスト】マスク頭痛にかかわる筋肉ってどこ?

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 大阪府高槻市の小学校で今年2月、男子児童が体育の授業で持久走をした後に亡くなる事故が起きた。走っていたときにマスクを着けていたかはわかっていないが、倒れた児童が保健室に運ばれた際はあごにマスクがかかっていたとみられている。

 同様の事故は海外でも起きている。中国では昨年、中学校の体育の授業で長距離走にマスクを着けたまま参加して、死亡する例が相次いだ。

 スポーツ庁は昨年5月、「学校の体育の授業におけるマスクの着用は必要ない」という旨の通知を出している。ただ判断は児童たちに委ねられている。マスクを着けて体育の授業に参加している子も多いとみられる。

 マスクを着けて運動することで、体にどんな反応が起きているのか。東海大学体育学部教授の恩田哲也さんは今年5月、東京工芸大学の山本正彦教授、大原記念労働科学研究所の内藤堅志さん(労働衛生)とともに、その危険性について実験した。

■運動時は要注意

 被験者には不織布マスクを着用した状態としない状態で自転車こぎ運動をしてもらい、心拍数や血液中の酸素飽和度、運動のきつさを示す自覚的運動強度(呼吸・脚)を測った。その結果、マスクを着けないと緩やかに追い込んでいく形になるが、マスクを着けると急激に苦しさがやってくる状態がみられた。

イラスト/宮野耕治(AERA6月14日号から)
イラスト/宮野耕治(AERA6月14日号から)

 特に汗を多くかきやすい人は危険性が高まるようだ。実験でも苦しさが顕著に表れた。マスクが汗で張り付いてしまうことが呼吸をつらくすると、実験メンバーはみている。とはいえ、新型コロナウイルスの変異株の出現などで、マスクを着けない人に対する世間の視線は厳しさを増している。内藤さんは、

「子どもの場合、学校や授業などでは特に『外したらいけない』という心理が働きます」

 と、子どもたち自身でマスク着用の必要性を判断することの難しさを指摘する。

 最近では、マスク内のスペースを確保するためプラスチック製のインナーフレームが市販されている。恩田教授が自ら試してみたところ、安全性を向上する効果を感じたという。

「マスクが密着する面積が減るので苦しさは減少しました。ただ、激しい、追い込むような運動時や夏場等の発汗を多く伴う環境だと不十分なことがあるので注意が必要です」(恩田教授)

(編集部・高橋有紀)

※AERA 2021年6月14日号より抜粋