往年の「ちんちん電車」の面影を彷彿とさせる名鉄岐阜市内線10型。台車は軸距1981mmのブリル21E型高床式単台車を装備。岐阜駅前 (撮影/諸河久:1965年3月20日)
往年の「ちんちん電車」の面影を彷彿とさせる名鉄岐阜市内線10型。台車は軸距1981mmのブリル21E型高床式単台車を装備。岐阜駅前 (撮影/諸河久:1965年3月20日)

戦後生まれの筆者が体験できた「ちんちん電車」

 最後のカットが名古屋鉄道岐阜市内線のモ10型。戦後生まれの筆者が体験できた現役最後の「ちんちん電車」で、1914年名古屋電車製の高床式木造単車。戦前は前掲の市電400型と同様のオープンデッキ仕様で、戦後になって乗降扉を増設されている。手用ブレーキにフート・ゴング、大きな救助網を装備する古色蒼然とした「ちんちん電車」だった。

 ワンマン運転になって久しい都電荒川線に乗ると、「発車します」の音声と共に「チンチン」と二点打の信鈴音が聞こえてくる。獅子文六も聴いた「ちんちん電車」の点打音は、現代に脈々と息づいている。

■撮影(宮松金次郎):1934年8月26日

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諸河久

諸河久

諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情(天夢人)が絶賛発売中。

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