滋賀大データサイエンス学部「プログラミングI」の授業。実社会で活躍している人材を含め、総勢44人の教員が指導にあたっている(写真/滋賀大提供)
滋賀大データサイエンス学部「プログラミングI」の授業。実社会で活躍している人材を含め、総勢44人の教員が指導にあたっている(写真/滋賀大提供)

 世界から後れを取っているとされる日本のデータサイエンス教育。急務なIT人材の育成に、産学官が連携して動き始めた。AERA 2021年4月19日号から。

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 産学官が一体となった実践的な教育への取り組みはこれまでも見られたが、ここにきて目立ちはじめたのは、データサイエンスを軸にした連携、さらに地方からの奮起だ。

■子ども服データで学ぶ

 17年に国内で初めてデータサイエンス学部を開設した滋賀大学もしかり。AI開発において重要な役割を果たすデータサイエンス(DS)を普及すべく、学部の教員による講義を「滋賀大DSビデオ」とし、YouTubeで一般公開している。

 昨年3月には、新型コロナウイルス感染防止のために休校要請が出されたことを受け、高校生への学習支援として「高校生のためのデータサイエンス入門」を開講した。もともとはNTTドコモグループ傘下の「ドコモgacco」のeラーニングへの提供を想定し、週ごとの課題も含めて作成された動画だったが、同大の教員が「動画だけならすぐ公開できる」とYouTubeへのアップを発案し、実現した。岡島傑(すぐる)副事務長は、当時をこう振り返る。

「自宅学習を余儀なくされている高校生のために何か役に立ちたい思いがあったようです」

写真/滋賀大提供
写真/滋賀大提供

 講座は1回が4~5分の動画で、竹村彰通学部長が概要を説明した後に同大の教員4人が分担。全20回の講義制で、高校数学Iの「データの分析」を用いるなど、高校生にも理解できる内容だ。

 この講座がきっかけとなって、高大連携に結びついた例もある。

 データサイエンスを柱とした理系教育を推進する兵庫県立姫路西高校では、1年次から「データサイエンス研究・探究」などを教育課程に組み、3年次には集大成として論文にまとめあげる。文部科学省によるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校でもある。

 地元企業の「西松屋チェーン」とも連携し、子ども服の販売データを使って分析するなど実践的な学びにもつなげている。同校数学科の林宏樹教諭は言う。

「滋賀大の動画講座は基礎がていねいに説明されており、データサイエンスの導入として最適な教材でした。コロナ禍による休校で自宅学習で活用した実績から滋賀大学に連携を依頼して、引き続き授業で利用させてもらえるようにお願いしました」

■滋賀から「GAFA」を

 滋賀大の学部開設からわずか4年。オンラインを駆使して、地元だけでなく全国へとデータサイエンスの魅力を発信してきた。岡島副事務長は言う。

「日本はデータサイエンスの分野で欧米諸国に後れを取っており、それがGAFAのような企業が育たない一因となっている。データサイエンティストの育成は日本の喫緊の課題。本学は初のデータサイエンス学部として先鞭を付けた以上、全国に普及する使命がある。これからも支援を広げていきたい」

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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データサイエンス学部が続々と