ジオラマ食堂の猫たちの様子は、ツイッターやユーチューブでも公開している。「猫家族は私たちに生きる希望を与えてくれました」とオーナーの寺岡さん。今後は「保護猫活動に力を入れたい」(ジオラマ食堂のツイッター画面から)
ジオラマ食堂の猫たちの様子は、ツイッターやユーチューブでも公開している。「猫家族は私たちに生きる希望を与えてくれました」とオーナーの寺岡さん。今後は「保護猫活動に力を入れたい」(ジオラマ食堂のツイッター画面から)

 がいるところに鉄道があり、鉄道があるところに猫がいる──。一体、なぜ。猫と鉄道の不思議な関係が見えてきた。AERA 2021年4月19日号の記事を紹介する。

【写真5枚】ジオラマの線路に寝そべる猫に、ローカル線の猫駅長

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 線路上に寝そべり、山肌で爪を研ぎ、猫パンチで電車をなぎ倒す……。これは一体!! 電車より巨大に成長した猫なのか。

「保護した4匹の猫たちです」

 と話すのは、「ジオラマ食堂」(大阪市天王寺区)のオーナー寺岡直樹さん(56)。豚キムチ定食やオムライスがおいしい店だが、店の真ん中に1970年代の日本の高度経済成長期の地方都市をイメージした総延長約50メートルの大きな鉄道模型「Nゲージ(150分の1)」がある。そう、猫たちがいるのは鉄道ジオラマの上だ。

「ジオラマ食堂」のジオラマの上で寝そべる猫。猫を実物大に換算すると、70メートル近くになるという(ジオラマ食堂のツイッター画面から)
「ジオラマ食堂」のジオラマの上で寝そべる猫。猫を実物大に換算すると、70メートル近くになるという(ジオラマ食堂のツイッター画面から)

 食堂は、鉄道好きの寺岡さんが2018年に開業。そんな店に猫たちがやって来たのは昨年6月のこと。店の隣にある保育園の保育士が、生まれたばかりの瀕死状態の子猫を園の前で見つけて保護し、連れてきた。

 犬派で猫を飼ったことがなかった寺岡さん。それが、子猫の愛くるしさに惹かれ、引き取ることにした。すると翌日、母猫らしき猫がガラス越しに店内を覗きに来るようになった。7月に入ると、店のそばで3匹の子猫が見つかった。先に引き取った子猫と毛並みなどが似ていて、きょうだいと見られた。

 家族をバラバラにするのはかわいそうや──。

 こうして、寺岡さんは母猫と子猫4匹を保護。子猫1匹は寺岡さんが自宅で飼い、母猫と子猫3匹を食堂の一角で飼うことにした。当初、猫たちはケージで育てていたが、狭くてかわいそうだと思い夜はケージから出すことに。すると、ジオラマが猫たちの遊び場になった。その様子をSNSで配信したところ、予想外の反響があった。線路や電車で遊ぶゴジラ化した「巨大猫」の様子が人気を呼んだのだ。

「猫を助けたつもりがまったく逆で、助けられました」

 と寺岡さん。

■破壊されても平気

 実は、店は新型コロナウイルスの影響で大打撃を受け、閉店を考えたこともあった。それが猫たちに会いに次々とお客が来るようになった。猫たちはジオラマを「破壊」することもある。でも、寺岡さんは明るく話す。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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